このページは、2004年の大河ドラマ『新選組!』を語るページです。

第 1回 黒船が来た 1月11日放送 第 6回 ヒュースケン逃げろ 2月15日放送
第 2回 多摩の誇りとは 1月18日放送 第 7回 祝四代目襲名 2月22日放送
第 3回 母は家出する 1月25日放送 第 8回 どうなる日本 2月29日放送
第 4回 天地ひっくり返る 2月 1日放送 第 9回 すべてはこの手紙 3月 7日放送
第 5回 婚礼の日に 2月 8日放送 第10回 いよいよ浪士組 3月14日放送

新選組TOP  / 時代劇TOP / DJ USHIJIMA'S PAGE


第10回「いよいよ浪士組」(3月14日放送)

文久三年(1863年)正月17日、江戸。勇(香取慎吾)は山南(堺雅人)の仲介で、浪士組取締役の山岡鉄太郎(羽場裕一)を紹介される。その足で、浪士組結成の献策をした清河八郎(白井晃)にも会いに行く。涙ながらに浪士組への参加を要請された勇は、大いに感激する。勇は「浪士組として上洛したい」と養父・周斎(田中邦衛)に膝詰談判し、その姿に胸を熱くした周斎は快諾する。さっそく歳三(山本耕史)と計らい、試衛館門人から同行する有志を募るが、食客以外の門人たちは浪士組加入に難色を示し、勇は出鼻を挫かれる。また、自分も浪士組に加わりたいと考えていた沖田(藤原竜也)は、勇から「塾頭として江戸に残るように」と厳しく申し渡される。勇の真意を知らぬ総司はひどく落ち込んでしまう。勇たちは、浪士組最高責任者の松平上総介(藤木孝)を訪ね、浪士組結成についての真意を問う。上総介はかつて勇の講武所出仕を反故にした張本人、松平主税助と同一人物だった。上総介は勇たちに覚悟の程を伝え、試衛館の者たちを厚遇すると約束する。浪士組入隊受け付けの日、会場の伝通院は予定数を大きく越える浪士たちで溢れ返っていた。「これでは約束した支度金を浪士たちに払うことができない」と、上総介は仮病を使い役目を放棄してしまう…。
【牛嶋のズバリ解説】
スカパーの『時代劇専門チャンネル』で、渡辺謙さん主演の『仕掛人 藤枝梅安』が始まった。ご存知!池波正太郎原作で、なんと!あの”必殺シリーズ”の原型となった作品である。梅安というと緒形拳さんが有名だが、渡辺梅安も最高!以前フジテレビで放送されていた時も見ていたが、改めて面白い!と思った。謙さんの梅安がまずいいし、橋爪功さんの房楊枝屋・彦次郎もいい。元締の音羽屋半右衛門を演じる田中邦衛さんだっていい。キャステイングもさることながら、とても丁寧に作られているのが素晴らしい。筆者的には、毎回梅安が美味いモノを食べているシーンが好きだが・・・。全5話で、その後、『仕掛人 藤枝梅安 1』『仕掛人 藤枝梅安 2』と放送されるから楽しみだ。さて、早くも10回目となる感想文いきましょう。

@恐れ入った・・・
今週は先週の続きからスタート。よって本編が始まってからの日付表示はなし。引き続き文久3年(1863年)正月17日という事になる。先週は山南の手紙を読んで、”これで道が開けた!”と、急いで家を飛び出した所までを描いていた。しかし、本編の最初は、勇が床に付いて思い悩んでいる所から始まった。一瞬、”あれっ?”と思ってしまったが、その謎はすぐに解明された。勇が床に付いて、今日会った出来事を振り返るという構成だったのだ。なかなかいい演出だなぁ〜というのが正直な感想。期待して家を出たのに”あれ?どうしたんだ?”と視聴者に思わせる。そして今日の出来事を振り返させ、勇の今に戻って、”そうか、そういう事だったんだ。それじゃぁ、落ちついて眠れる訳ない”と思わせる手法だ。さすがである。恐れ入った!。

A清河はどう豹変する?
清河八郎が登場した。ご存知!清河は浪士組結成に大きく関わり、結果的に新選組結成を導く男である。よって新選組を描く際には必ず登場する人物だが、将軍警護と言いながら実は攘夷決行を打ち出すなど、”汚い男”というのが誰もが持つイメージか?しかし、勇の前に現れた清河は、意外に謙虚な男であった。その謙虚さが逆に恐いが、思えば数ある新選組作品を見ても、清河を描くのはいずれも京に着いてから。だからこの時点での清河は貴重と言える。今後京に上ってからどう豹変するか楽しみだ。

B留まっていれば・・・
浪士組に加わりたいという勇の決意は固かった。妻・つねに打ち明け、養父・周斎にも談判。周斎は、初めて我を通そうとする勇の姿に胸を熱くして快諾した。この時、まさか新選組を結成して、やがては賊軍となってしまうとは誰一人として想像もしていなかっただろう。歴史は変わらないが、幼子を抱えたつねの表情を見ていると、この時に江戸に留まっていたら・・・と考えてしまった筆者であった。

CおっけーとNG
勇は試衛館の面々にも浪士組参加を打ち明けるが、門人以外は全員受諾した。この辺りから試衛館が一枚岩である事を伺わせた。しかし、そんな中で総司だけは置いていくと決めた勇。総司は涙ながらに訴えるが、勇は譲らなかった。このエピソードは知らなかったが、じゃぁ、なぜ連れて行く事になったのか?その後の話に期待が持てた。それにしても、総司のセリフが面白かった。”なんなんだよ〜なんで俺ばっか子供扱いなんだよ”。これは明らかに現代風の言葉づかいである。不自然にも思えたが、総司の無念さが強く表現されていて、これはおっけー!って感じ。左之助の”さ〜”には相変わらず違和感が残るが・・・。

C山本歳三がいいね〜
山本耕史さん演じる土方歳三が良い。回を重ねるごとにその良さが表れてきているような気がする。浪士組結成の際に、”裏があるんじゃねえか””本当に清河って男は信用出来るのか?”と疑問を投げかけ、”話がコロコロ変わるのが気に入らね〜”と1人だけ疑いの目を持つ姿はとてもよかった。もう山本さんは完全に土方歳三になりきっている。また今回は、”近藤さん””永倉くん”と呼びかけるセリフが初めて出てきたが、”おおっ、副長!カッコいい!”と思わず唸ってしまった。歴代の歳三の中でも山本歳三は上位にランクされるのでは?大河終了後、山本耕史さんで”燃えよ剣”をやって欲しい位だ。

Dなんなんだ、こいつは?
浪士組最高責任者は、松平主税助改め松平上総介だった。勇の講武所出仕を反故にした張本人だが、勇におだてられると試衛館の面々を厚遇すると約束した。なんと単純な男なのか・・・。その後、50人を予定していた浪士組が300人になるのを知ると仮病を装い、浪士取扱を辞職。勇はすっかりこの男に振り回された格好となった。自分の出世を願い、人を上から見下ろし、自分を守る事だけで生きている男・・・。この手の男は現代にもたくさんいるが、どの時代も同じような人間がいるもんだと思い、なんだか悲しい気持ちになってしまった。そうそう、現代は身分制度はないが、役職、肩書きがある。そんなもん、くそくらえー!というのが筆者の見解だ。役職、肩書きは”自分の名前”でありたい!

Eみつなら行きかねない?
試衛館に戻った勇に、”なんで私を連れていかないの?”と問い詰める沖田の姉・みつ。冗談で訴えるのならまだしも、みつの目は真剣だった。結局はあきらめた?様子だったが、浪士組の中に男装した女性が参加していたという話がある。もしかしてその女性とは沖田みつだったのか??まさかそんな事はないだろうが、やりかねない沖田みつだった。夫の林太郎は行かないと決めたのに・・・。その対比が面白かった。

Fまた新たな登場人物が・・・
今回はドラマ途中で日付が変わった。先週の続きから始まったので、今回は1話で2日を描いた事になる。今後もこういう事があるかと思うが、いつどんな感じでドラマが動いているのか分かるのはとても親切な事。時代劇を描く上でとても大事な事だと思う。正月17日から約半月後の2月4日になっていたが、いよいよ江戸・小石川の伝通院に浪士が勢ぞろいする事になった。浪士組は、支度金50両目当ての浪人によって300もの人数に膨れ上がっていた。全てこれも清河の策である。その策に勇たちは見事に乗せられた格好になったが、粕谷新五郎、殿内義雄、芹沢鴨ら、のちの新選組メンバーも浪士組に参加。今後どう人物を描いていくのか注目だ。

F三谷氏、最高!
伝通院を後にした試衛館の面々を待っていたのは沖田総司だった。髪を月代にし、もう子供ではないと涙ながらにアピール。それに心を打たれて勇は、総司も京へ連れて行く事を決めたのだった。この事実?は知らなかった筆者だが、以前あった”いつまでも子供扱い”という総司のセリフが、ここになって生きてきた。さすが三谷氏!ここに、こうつなげようとしていたのか!と思うと素晴らしいの一言。細かいエピソードが随所に織り込まれる三谷氏の脚本は最高だ!

G今年は間違いなく面白い!
今回はとても面白かった。今回は・・・と書くと語弊があるが、今年の大河は間違いなく面白いと実感した回だった。登場人物の描き方、分かりやすい物語、メリハリ・・・。そりゃ、細かい事を言ったらキリがないが、物語の展開方法は我々の予想を超えるものであると思う。まもなく新選組結成だが、来週が待ち遠しい!

【来週の展望】
勇たちがいよいよ京都に出発する。”母上行ってきます”とタイトルにあるように、勇と母の関係がまたクローズアップすると見られる。義父・周斎に続いて、本当の親子になれるのか?注目だ。そして清河八郎の動きにも注意を払いたい。来週の予告を見る限り、今週とは明らかに顔つきが変わっていたが・・・いよいよ本性を現した!って感じ。とにかく新選組結成に至るまでの動きはしっかり見ていきたい。

第9回「すべてはこの手紙」 (3月 7日放送)

文久3年(1863年)正月17日、江戸。勇(香取慎吾)が、妻・つね(田畑智子)との間に長女・たまを授かってから数か月。講武所の教授方見習として初出仕する日がやって来た。藤堂平助(中村勘太郎)を伴い意気揚々と家を後にした勇だったが、講武所に着いてみると「推挙の事実はない」と言われ、門前払いを食らわされてしまう。事情も分からず意気消沈していた勇は、街中で坂本龍馬(江口洋介)と再会する。土佐藩を脱藩し、今は勝海舟(野田秀樹)に師事しているという龍馬は、勇たちを勝に引き合わせる。勝の屋敷で、勇は佐久間象山(石坂浩二)とも再会する。勝と象山の先進的な話には全くついていけない勇だが、講武所の話を反故(ほご)にされたのは農民出身だからだと指摘した勝の言葉で、ようやく事の真相を知る。再び講武所に押しかけた勇は、自分は農民ではなく武士であると抗弁するが全く聞き容れられない。さらに佐々木只三郎(伊原剛志)から「お主は武士ではない」とまで言い切られ、勇はますます己の立場に虚しさを募らせる。身の丈にあった平凡な人生を送るしかないのか―諦めかけた勇だったが…。
【牛嶋のズバリ感想文】
先週お伝えした通り、先週から今週にかけて大島渚監督の『御法度』を見た。ご存知!局中法度、軍中法度という厳しい戒律の下、入隊した1人の少年の美貌をめぐって、新選組が狂気を帯びた混乱に陥っていくという物語だ。原作は司馬遼太郎の『新選組血風録』のうちの『前髪の惣三郎』『三条磧乱刃』。確かに在り得る話かもしれないが、よくもまぁ、大島渚さんはこれを映画化したものだと思った。筆者なら絶対に客にウケないと思って撮らないが・・・。それに松田龍平くんはもっと演技者だと思っていただけに残念だった。でも、筆者が見たのは単なる1作品。その後、松田龍平くんも数々の映画賞を受賞するなど成長しているだろうし、なんと言っても”あの目とあの存在感”は生まれ持ったモノ。また、両親を俳優に持つサラブレッドだからこそ”化ける可能性”は十分にある。現にあの高島(嶋)兄弟がデビューした際にも同じ感想を持ったが、その後彼らは急成長し、今では立派な俳優になっている。とにかく、今後の彼に期待したいものだ。さて、このように新選組を扱った作品は多いが、その理由として、新選組の存在が事実であり、その役割がはっきりしていた事。そして、個性ある隊士がたくさんいた事、架空の人物を入隊させても十分物語になるという場面設定があるからだろう。だからといって架空の物語をどんどん作って欲しくはないが、大河『新選組!』は新選組作品の”手本”となるよう期待するのみだ。さぁ、9回目の感想文にいきましょう。

@残りの人生は5年
今回は文久3年(1863年)の正月17日を描いた。先週から8ケ月後という設定だが、勇は30歳になっていた。勇は35歳で亡くなるので、残り5年を35話強で描くという事になる。前にも指摘したが、全45話は勇の35年の人生の45日・・・という意味合いがあるらしい。これからその回(日数)がどんなバランスで描かれるのか楽しみだ。

A勇とたまの親子愛は?
勇とつねの間には長女・たまが生まれていた。勇は、たまがまだ幼い中で京都に行く事になるが、江戸に戻った際には何度か会っているようだし、今後、勇とたまの親子愛がどう描かれるか注目だ。筆者としては涙を誘う場面を作って欲しいと願うが・・・。ちなみにたまは、のちに宮川音五郎の次男・勇五郎を婿に迎える。そして近藤勇五郎は五代目を継ぐ事になる。

B手紙の前触れ
勇は講武所の教授方見習として藤堂平助を伴って初出仕した。しかし、推挙の事実はないと門前払いを受けてしまう。ここで講武所の教授になっていたら、新選組の近藤勇誕生もなかった訳だが、理由はのちに出会った勝海舟によって明らかにされた。多摩の百姓出身がネックになったとの事。勇は再び講武所に行くが、佐々木只三郎から”お主は武士ではない”とまで言われる始末。現代にもよくある内定取り消し。でもその理由には経歴詐称はあっても身分というものはない。つくづくこの時代の人は可哀想だと思った。こんな不当な事があっていいのか!と筆者も怒りを感じてしまうほどで、すっかり感情移入している筆者がいた。勇はますます己の立場に虚しさを募らせたが、勇のいない所で今まさに時代は動こうとしていた。それが今回のタイトルにもなった”すべてはこの手紙”という訳である。逆に、講武所に努めてから浪士組の話を聞いていたらどうなっていたのだろう?とも思ったが・・・。

Cリアリティを大事にして欲しい
講武所から門前払いを受けた勇は、街中で坂本龍馬と再会した。よくもまぁ、こんなに広い江戸で再会するものだと思うが、まぁ、いいだろう。これはドラマである。うううううう。んんんんんん。でもドラマと片付けてしまう場面が多いのが今年の大河の欠点ではないだろうか。もうリアリティのない場面設定はいらない!これが筆者の考えだ。厳しいかな?

D勇と佐久間象山のつながり
土佐勤王党を立ち上げながら土佐藩を脱藩した龍馬。攘夷派から一転して開国派へと動いた訳だが、開国する事の意味を知った上での行動であろう。今は幕府軍艦奉行並・勝海舟に師事している龍馬だが、勇たちを勝に引き合わせた。実際の所、近藤と勝のからみはよく分からないが、時代の動きを表す上では勝の登場はとても効果的とも思われる。確かにリアリティはないが、これが”割り切った”三谷氏の演出上の狙いであろう。勇は佐久間象山とも再会するが、佐久間象山の息子・三浦啓之助ものちに新選組に入隊する。2人がこうしてつながるとはこの時思ってもいなかっただろう。

E野田海舟にドキッ!
勝海舟が初登場。幕末モノを描く上では欠かせない人物だけに、野田秀樹さんがどう勝を演じるのか注目した方も多いだろう。この頃に勇と勝が会っていたかは定かではないが、勇が流山で投降した際には、歳三の懇願で助命嘆願の手紙を記した人物でもある。この時点で2人が出会っていたなら、勇が最期を迎える際に再度登場すると思われるが、野田秀樹さん演じる勝はなかなかのものだった。ちょっと聞き取りにくい部分があったが、独特の口調は”やはり勝”だった。元々持つ勝の人間性に野田さんの味が加わった勝海舟という感じ。自然の演技とあの独特の間は見事!見ていてドキっとした。

F歳三とお琴
歳三は見合いをしたお琴と度々会っていた。”祝言はいつ?”という琴に対して”束縛されるのがいやなんだ”と答える歳三。現代劇を思わせるやりとりに、この当時にしては珍しい?歳三の硬派な面が見られた。←ん?決して珍しくはないかっ?”知れば迷いしなければ迷わぬ恋の道”これは上洛の際に歳三が残した俳句だが、琴を詠んだものと言われている。今後どのように琴と歳三が描かれていくのか注目だ。なお、琴を演じる田丸麻紀さんはモデルからの転進だが、身長は172センチとの事。

G流派の違い?
見逃してはならないのは今回、沖田総司の義兄・林太郎が試衛館に入門して稽古をつけてもらっていた事。総司、永倉、山南らに指導を受けるが、それぞれ正眼の構えが違うと林太郎の戸惑う姿が描かれていた。天然理心流、北辰一刀流、神道無念流の違いなのか?

Hやはり、うまい!
今回もそれぞれの登場人物をしっかり描いていた。歳三は恋の話、総司は子供の扱いがうまく、左之助は食べてばかりの生活だったが、ようやく生きる道を模索し始めた。永倉は隠れてアルバイト。平助は家柄の良い出だった事が明らかにされた。山南は山岡鉄太郎からの呼び出しに颯爽と出かけていった。これだけの登場人物がいるのに各人をしっかり描いている点はさすが!またまた引き合いに出して申し訳ないが、”武蔵-MUSASHI-”のスタッフにはこの演出法を見習って欲しいものだ。

I勇の道が決まった瞬間
山岡鉄太郎からの連絡により、山南が動いた。幕府が身分を問わない浪士組を結成するとの事で、先に出かけた山南はつねに手紙を託した。勇が難しい政に進むのを恐れたつねは手紙を隠すが、左之助の行動によってその手紙の存在が明らかになった。その手紙を読んだ勇は、身分の違いによって講武所の教授方の道がなくなっただけに、目を見開いてと喜ぶ。まさに”すべてはこの手紙”で勇の進むべき道が決まったのである。それはそうと、ふわふわ玉子・・・に、見ているこっちが癒されてしまった。作り方が公式サイトにUPされていてびっくり。ナイスフォローだ!

【来週の展望】
”いよいよ浪士組”というタイトルにあるように、浪士組が”いよいよ”組織される。今年の物語の大きな節目になるので是非じっくり見ておきたいものだ。試衛館の面々がどんな気持ちでそれを受け止めるかも注目。清河八郎、芹沢鴨も再登場!見所はいっぱいだ。見逃すなかれ!

第8回「どうなる日本」 (2月29日放送)

文久2年(1862年)5月29日。勇(香取慎吾)に時勢を説く山南(堺雅人)、ただ食べては寝ているだけの原田(山本太郎)…江戸市ヶ谷の試衛館道場では、食客たちが、相も変わらず賑やかな日々を送っていた。そんな中、幕府の講武所勤めが決まった勇は、養父・周斎(田中邦衛)が苦労して用意したある“みやげ物”を携え、責任者の松平主税助(藤木孝)を訪ねる。勇は主税助から教授方への就任を約束されるが、佐々木只三郎(伊原剛志)という男から、「多くを期待しないほうがいい」と忠告される。講武所の実態を目の当たりにした勇は、佐々木の言葉の意味を知る。その頃、藤堂平助(中村勘太郎)を試衛館にもらい受けるため、沖田(藤原竜也)と永倉(山口智充)は平助が属する北辰一刀流伊東道場を訪ねる。沖田らは道場主の伊東大蔵(谷原章介)と直談判するが、伊東は聞く耳を持たない。永倉の提案で、伊東の門弟・加納(小原雅人)と総司に試合をさせ、その結果によって、平助の試衛館入門が叶うかどうかが決まることになる。一方、歳三(山本耕史)は姉・のぶ(浅田美代子)の頼みで、しぶしぶながら多摩まで見合いに行き、お琴(田丸麻紀)という娘を紹介される。帰宅した勇は、英国公使館の警固を担当している松本藩の伊藤軍兵衛(光石研)という男から、「公使館が襲撃を受けてけが人が出た時のために石田散薬を譲ってほしい」と頼まれる。そこで勇は、みつ(沢口靖子)や源三郎(小林隆)、原田を伴って、公使館が置かれている東禅寺に石田散薬を届けに行くが、応対に出た松本藩士から意外な話を聞かされる。東禅寺で初めてイギリス人を目の当たりにした勇たちは、彼らとすっかり意気投合して酒を酌み交わす。しかし、その様子を目撃した軍兵衛が突如乱心してしまう…。 *勇の養父・周斎 … 周助が名を改めたもの。
【牛嶋のズバリ解説】
久しぶりに役所広司版の『燃えよ剣』のビデオを借りて見た。テレビ放送された平成2年以来なので13ぶりに見た事になるが、ご存知!司馬遼太郎作の人気小説をドラマ化したものである。主役は土方歳三で役所広司さんが演じている。近藤勇は石立鉄男さん。その他にも多数の出演者がいるが、中でも一番目を引いたのは、役所武蔵で佐々木小次郎を演じた中康次さんが七里剣之介役で出演していた事。武蔵と小次郎の再戦が行われた格好となったが、中康次さんの演技には光るものがあった。今後も時代劇にどんどん登場して欲しいものである。また、同じく役所武蔵で祇園藤次を演じた河原崎建三さんも新見錦役で登場していた。その他、”白虎隊”で土方歳三を演じた近藤正臣さんが伊東甲子太郎役で出演するなど、物語とは別の意味で楽しめた。戦(いくさ)シーンが少ない点から予算のなさを感じたが、新選組作品はどれを見ても興味をひくものばかりだと改めて思った。筆者としては栗塚旭版をまだ見た事がないので残念だが・・・。さて、8回目の感想文いきましょう。

@納豆論議
今週は文久2年(1862年)5月29日という設定。先週が文久元年(1861年)8月27日だったので、9ケ月後という設定だ。勇も29歳になっていた。まずは食客とともに食事をするシーン。納豆論議が展開されたが、山南敬介からは砂糖、勇みからは黄粉をかけていたエピソードが・・・。その場につねも寄り添うなど実に楽しそうな雰囲気だったが、東北生まれの筆者。実は納豆に砂糖をかける風習があったのだ。山南は仙台藩出身と言われるが、砂糖は東北地方から伝わったのか?黄粉は初めて聞いたが、それは多摩の風習か?物語に全く関係ない細かいシーンだが、興味をひいてしまった。

Aつねの好感度が上昇中
食事中に藤堂平助が現れた。そこへ”藤堂さんではないですか?朝飯はいかがですか?”と勇は平助に優しく話しかけた。”まだ食べる気か・・・”とふでの厳しい声が響く中、勇の妻・つねは”普段食事の世話をしてもらってるかわりに、一度主が窮地に立てば一命を投げ打って恩に報いる。それが食客というものです・・・”と諭す。その言い方には嫌味がなく、むしろ可愛らしさを感じた。田畑つねの好感度は赤丸急上昇だ。

B勇はいつ時代を飲み込むか?
先週から今週にかけて寺田屋事件が起きている。ご存知!文久2年(1862)年の4月23日に、京都近郊の伏見の寺田屋で薩摩藩尊攘派志士が殺害されたが、勇は薩摩対薩摩の図式に驚きを隠せない様子だった。山南に日本外史をもらう勇だが、一度清河八郎に会って、幕府を立て直すため力を貸す事に力を注ぐよう薦められる。講武所勤めのために余裕はないと断るが、その中には時代をまだ読み込めてないという現実もあったのでは?今後、勇が時代の動きをどうつかみ、この世のためにどう動こうとするのか注目である。

Cたまの由来のエピソード
子供が出来たつね。男だったら多摩にちなんで”たまお”。女だったら”たま”と勇は言うが、まさかそんな由来があったとは!のちに女の子が生まれるが、この名前の由来は面白いエピソードだ。なお、この頃は猫=タマという図式がなかったと思われる。じゃ、この時代に猫の名前で多かったのは何か?と思ってしまうが、ネズミ捕りの道具のために飼っていただけで、名前は付けられていなかったと思われる。

D新選組出演者歴は楽しいかも
幕府の講武所勤めが決まった勇は、父・周斎が用意したみやげ物を携えて松平主税助を訪ねた。佐々木只三郎から”多くを期待しないほうがいい”と忠告され道場を見学するが、覇気のない道場に佐々木の言葉の意味を知ったのだった。佐々木只三郎は、坂本龍馬の暗殺を指揮したと言われる、のちの京都見廻組隊長だが、回を重ねるごとに新選組に関わるいろんな人物が出てきて楽しみが増してきた。なお、佐々木只三郎を演じる伊原剛志さんは、渡辺謙主演の”壬生義士伝”で土方歳三を演じていた。今感想文の冒頭でも書いたが、新選組出演歴を探るだけでも結構面白いかもしれない。

Eいいぞ、伊藤甲子太郎
藤堂平助を試衛館にもらい受けるため、総司と永倉は北辰一刀流伊東道場の伊東大蔵に直談判した。ご存知!のちの伊東甲子太郎だが、伊東は談判にも聞く耳を持たず。結局、伊東の門弟・加納と総司が勝負して総司が勝利して平助をもらい受ける事になったが、伊東は”平助を渡す代わりに総司をもらう”と言い出す始末。なんとふてぶてしい男か!伊東甲子太郎よ!このワンシーンだけで一気に悪者になったのは言うまでもない。ご存知!のちに新選組に入隊し別離。そして殺害される伊東だが、”平助を貸し出す”と言った所が今後の物語に期待を持たせた。伊東を演じた谷原章介さんは期待の若手俳優だが、まさに伊東役にぴったり。伊東役ではもったいない気さえした。

F”プレイボーイ”歳三
歳三は姉・のぶの頼みで、しぶしぶながらお琴という娘と見合いをした。兄達が仕組んだ事で、見合いはなかった事にしようと頼むが、琴は”私の事が嫌いですか?”と食い下がる。”嫌いではない、むしろ好みだ”と答える歳三だが、”プレイボーイ”と言われた歳三が垣間見られた。”お琴さんのうなじは透けるように白い。良い匂いがする。匂いが心が落ち着く。和らぐ・・・”その後どうなったかはご想像にお任せ。しかし結局は許婚となるお琴。今後どう物語にからんでくるのだろう。楽しみだ。

G伝七郎の怨霊?
講武所から帰宅した勇は、英国公使館の警固を担当している松本藩の伊藤軍兵衛から、”石田散薬を譲ってほしい”と頼まれる。軍兵衛が登場した瞬間、”おおっ、伝七郎ではないか!”と思ったのは私だけではないだろう。前作”武蔵-MUSASHI”で吉岡伝七郎を演じた光石研さん。三十三間堂で武蔵にあっさりやられてしまったシーンが蘇るが、おいしい役だったのに、存在感を見せつけずに殺されてしまったのは残念だった。その後、イギリス人2人を殺すが、失礼ながら筆者は”伝七郎の怨霊”という感じで見てしまった。

H異人と接するのは相当な事だった?
初めてイギリス人を目の当たりにした勇、みつ、源三郎、左之助。軍兵衛の独断で石田散薬を注文された事を知って無駄足をふんだ格好になったが、その後、みつを餌に?イギリス人と酒を飲み交わす事になった。今では信じられない話だが、この時代において髪の毛の色も違えば言葉も違う異国人は”異星人”に見えた事だろう。いや、この時代に限った事ではない。筆者も外国人と初めて話した時は恐かった。外国に初めて行った時も、何か危害を加えられるのでは?と不安に思ったものだ。それを考えたら、異国人と接するのは相当な出来事だったと思われる。それにしても、左之助が教えた歌を真似てのイギリス人の歌には笑ってしまった。軟派だったが、楽しいいヤツだっただけに殺されたのは可哀想だった。

Iやはり、人が良すぎるぜ
イギリス人2人が殺され、雨の中、勇は大声を出して天を仰いだ。異国人と言えども命を奪うのは許せない勇だが、やはり今の勇とのちの勇を考えるとギャップを感じてしまった。ましてやこれから目の前で人が死んでいくのを何度も見る事になる訳で、ホント、大丈夫?と思ってしまった。今回登場した伊東甲子太郎もやがては殺害されるが、今の勇なら、”こんなやり方は卑怯だ!”と言いかねない。先週も指摘したが、最後の勇のシーンに、より一層その気持ちを強く思ってしまった。”人が良い”に留まらず、”人が良すぎる”のが気になって仕方がない。これから徐々に・・・とは思うが、ホント、あまりにも人が良すぎる。それに、食客とはいえ、○○さん・・・と呼ぶのも違和感がある。歳三を”トシ”と呼ぶように、リーダー的な部分をこの時点で望むのは早すぎるのだろうか?

【来週の展望】
来週は娘のたまが生まれる。たまの成長を見る事なく勇は亡くなってしまう事になるが、それまでどう娘と接していくか注目だ。講部所に出勤するが、門前払い。その後坂本龍馬、佐久間象山と再会。勝海舟にも対面するらしい。リアリティを考えると筆者的に”?”だが、とにかく見てから判断しよう。さて筆者は来週までに、松田龍平主演の『御法度』を見る予定。見た方、いらっしゃいますか?

第7回「祝四代目襲名」 (2月22日放送)

文久元年(1861年)8月27日。勇(香取慎吾)の四代目襲名披露のために、府中六所明神に集った天然理心流の全門弟達が紅白に分かれて野試合を行う。歳三(山本耕史)や山南(堺雅人)の差配、惣次郎改め総司(藤原竜也)の剣客としての活躍など、野試合では試衛館食客の能力の高さばかりが目につく。その夜は府中の旅籠(はたご)で四代目襲名の宴会が催される。宴もたけなわになった頃、周助(田中邦衛)から、「勇が桂小五郎(石黒賢)の推薦で幕府の講武所・教授方になれそうだ」と明かされ、皆は口々に大いに盛り上がる。そんな中、いつの間にか宴席に紛れ込んでいた原田(山本太郎)が、勇の人柄に惚れ込んで「試衛館の客人になる」と宣言し、一同を驚かせる。そこへ、勇に直接祝いの言葉を伝えようと、坂本龍馬(江口洋介)が訪ねて来る。龍馬は勇に土佐勤王党の血判状を見せて、攘夷決行の行動を起こそうとしていることを告げる。外国人の命を奪おうという考えに賛成できない勇は、「相手も我々と同じ血の通った人間だ」と龍馬に翻意を迫る。ところが、そのやりとりを覗いていた捨助(中村獅童)が血判状を奪ったことから、抜刀した勇と龍馬が対峙する事態になってしまう…。
【牛嶋のズバリ解説】
先日スカパー”時代劇専門チャンネル”で放送された市川雷蔵主演の『新選組始末記』を見た。近藤勇を演じるのは若山富三郎(当時:城健三朗)、土方歳三は天知茂。主役の市川雷蔵は”謎の隊士”と言われる山崎蒸を演じている。時代劇はどれもそうだが十人十色。それぞれの監督によって人物設定や演出が全く違うので面白い。新選組を描いた作品はもっとあると思うが、これからも出来る限り接していきたいものだ。このページをご覧になっている方で、これはオススメ!というのがありましたら是非、教えて下さいね。さぁ、それでは7回目の感想にいきましょう。今回はちょっと厳しい視点で書いてみましたが、あくまでも筆者の独断ですのでお許しを。

@欲を言えば・・・
まずは先週のおさらいからスタート。外国人襲撃の企てに巻き込まれた⇒偶然、永倉と再会⇒諸外国との交流が進む⇒それに反発する攘夷集団が形成⇒動きが過激化・・・という流れだったが、勝海舟の咸臨丸なども紹介されていた。去年の武蔵では映像だけだったので、ナレーション入りは非常に丁寧な作りと言えるが、筆者的にはもっと時間をかけて解説して欲しいと思う。ドラマ本編に影響が出るので、決められた時間しか使えないのは承知している。しかし、本編にナレーションがない部分をしっかりカバー出来るので、冒頭は解説を入れる有効な場所であると言える。これで十分なのかもしれないが、例えば攘夷、尊王、勤王など言葉の説明などを入っていいのでは?と思った。現に今回は”尊王ではなく勤王”という言葉が出来てた。本編の中で登場人物のセリフで説明されていたが、どの藩が今どんな動きをしているのか?など勢力図を使ってもいいのでは?あくまでも欲を言えばだが・・・。

A”紀行”が悔やまれる
今週は文久元年(1861年)8月27日という状況からのスタート。先週の放送からほぼ1年後という設定だ。ヒュースケンはこの時点で既に殺害されているので、再登場はないという事になる。先週も書いたが、ヒュースケンのその後を一言入れて欲しかった。やはり、最後の”紀行”で入れるべきだったと思う。1週間経ってからもまだ書くなんて筆者もしつこいなぁ〜。

B兜の存在
勇の四代目襲名披露の野試合が府中・六所明神で行われた。源平になぞらえて紅白に分かれて試合をして、勇は鎧兜姿で総大将(行司役)、沖田総司は塾頭なので太鼓役との事だった。この野試合についてはよく分からないが、襲名披露にしてはユニークなものだと思って関心して見ていた。そんな中、伊東道場の藤堂平助が見学に来た。おめでとうと勇に挨拶をするが、勇は兜がずれるからしゃべる事が出来ない。徳川300年の太平の世で、兜はすっかり遠い存在になったと言えるが、勇=鎧兜はとても新鮮だった。今でも端午の節句で兜飾りが用いられるくらいだから、男の成長には”兜”の存在はなくてはならないものだと思った。なお、お祝いにかけつけた捨助が”武田信玄みたい”と言っていたが、軍配を持つ姿を見ての事か?でも、写真のないこの時代に武田信玄の姿を見たとは思えないので、言い伝えを元に捨助が発した言葉だったのだろう。

C総司の由来は?
沖田惣次郎がいつのまにか総司になっていた。勇の四代目襲名に合わせて総司に変えたと、総司自らのセリフで紹介されていたが、”惣次郎”という字から”総司”という字になったのかは説明されず。筆者はその字のいきさつは分からないが、その辺りは沖田総司という人物に謎が多いという事か。事実、惣次郎も、宗治郎、宗二朗、宗次郎とも記されたそうだし、”総司”でさえ、本人が”総二”と書いているものが残ってるらしい。一節には勇が”そうじろう”を略して”そうじ”と呼び続けたから改名したとも言われているが、真相はどうなのだろう。昔の人は漢字に執着がなかったようなのは確かだ。

Dさすが総司
試合は紅組試衛館、白組日野宿に分かれて行われたが、剣豪揃いの試衛館が圧倒的に押していた。そんな中、このままでは試合が早く終わってしまうと、勇は総司に白組の助太刀をしろと指図を出した。参加出来ないと残念に思っていた総司は願ったり叶ったり、勢い良く呼び込んで行った。原田、永倉と試衛館の面々に勝っていくが、勝つ度に笑みを浮かべる総司の表情は良かった。いつまでも子供扱いで、夜は宴会にも呼ばれないとくさっていたが、橋の上で葉っぱを真っ二つに切るシーン描かれるなど、試衛館の中でも剣の腕が優れていたのを表していた。

E一考願いたい
原田左之助が久々に登場。府中・六所明神近くで寝ていて、スイカを盗み、野試合にも参加。そして夜の宴会にも加わっていた。誰だ?という問いに”強いて言えば曲者!ははは・・・”などと明るいキャラを演じていたが、正直言ってこんなヤツはいない!ドラマとはいえ、ちょっと無理があるのではないだろうか?また、”天気もいいしさぁ〜”という言い回しにはびっくり。お前はいつの時代の男だ!と突っ込みを入れてしまったのは言うまでもない。現代に近い言葉づかいが多すぎると指摘されている今年の大河だが、いくらなんでも調子に乗りすぎではないだろうか。今後極端な言葉づかいやキャラ作りには一考を願いたい。今後も原田はこのキャラでいくのかと思うと不安になってしまった。

F感情移入しやすい理由
宴会ではいろんな人間模様が描かれた。真面目な山南。どくろの絵を描く勇。歳三は静かに飲んでいた。彦五郎、捨助らは思いっきりはしゃいでいた。それぞれの性格を考えた上でとてもうまく描いていたと思う。今年の大河は近藤勇が主役だが、勇以下の登場人物の設定がとてもうまい。感情移入しやすいのはそのせいだろう。でも、原田のように極端すぎるキャラは作る必要はないと思う。ある意味で山本太郎は演技がうますぎ!

G勇だけの成長ドラマにあらず!
勇に幕府の講武所・教授方の話が。みんなが祝福する中、1人浮かぬ顔をしていたのが歳三で、総司の剣、知恵の山南がいれば、もう俺は必要ないと周助に訴える始末。しかし、その後の周助のセリフが良かった。お前の知恵はお前自身の経験から生まれた知恵だ!生きた知恵だ!・・・と、実にうまい事言うもんだと思った。まさにその通りで、学問にとらわれない歳三がいたからこそ勇が生きたのだと思う。それでも生きる上での悩みを打ち明ける勇に対して”俺からすれば贅沢な悩みだ”とジェラシーとも思える発言をした歳三。まだ子供っぽい所があるが、この意識が変わるのはいつの頃か?勇の成長ドラマとともに、勇を取り巻く男たちの成長ドラマでもあるのは間違いない。

Hこのままでは新選組局長は務まらない
坂本龍馬が望月亀弥太とともにお祝いに駆けつけた。土佐勤王党を作り、土佐を攘夷の先駆けとして攘夷の実行を幕府に訴えるとの事。勇はそれに私も加えて欲しいと願い出るが、異国人を皆殺しにするという話を聞いて、”異国人を殺すべきではない”と訴える。一度加えて欲しいと願い出ておきながら龍馬の行動に反発するなど、勇は時代の流れを読み取ってないと見える。先週のヒュースケンとの一件を受けての事だろうが、永倉の”あなたは幼い”という言葉に加えて、筆者からは”あなたは純粋すぎる”という言葉をつけ加えておこう。これから結成される新選組を思うと、今の勇とのギャップがありすぎる気がするが、これが今後のひとつのカギとなるだろう。このままの純粋な男では新選組局長は務まらないと思うが・・・。

I真剣勝負を軽く描くのはいかがなのもか?
血判状をめぐって龍馬と立ち合う事になったが、ここで厳しい指摘をしたい。真剣での勝負をあまりにも簡単に描きすぎではないだろうか?現に龍馬も”命よりも大事なモノ”と言っていたように、ここでどちらかの命が奪われておかしくない状況なのである。見る側は見る側で”おおっ、勇と龍馬が・・・”と興味をひくだろうが、どちらかが命を落とすだとか傷を負うだとかは思って見てないもの。そんな中で盛り上げだけに立ち合わせるのはいかがなものかと思う。正直言って現代の人が描く時代劇は、真剣での勝負をあまりにも軽く考えすぎている。ある程度の殺陣はあっても、当時は一瞬のうちに勝負が決まっていたと思われる。ドラマを盛り上げるためにある程度は必要かもしれないが、簡単に刀を抜いていたとは思えないのだ。今回は勇の気力に押されて龍馬は血判状を破り捨てるが、これは話し合いで済む問題ではなかったのか?あるいは黙認して済む問題だと思う。現に龍馬は土佐勤王党に加わりながら、翌年の1862年3月に脱藩している。その辺りはどうフォローするのだろう。ドラマだからと言ってオーバーに描く必要はないと思う。等身大でいいのだ。それで十分にドラマになる!

Jいい夫婦関係
翌日家に戻るとふでが厳しい表情をしていた。一方、つねは少し不安に思いながらも夫を信じて出迎えた。どくろの刺繍を入れた稽古着を手渡すつね。”ちょっとヘンになってしまいました”というセリフは最高に良かった!感謝したいが、どう表現したらいいか分からない勇はつねをそっと抱き寄せた。この女性をずっと大事にしようと心に決めた事だろう。どくろの稽古着には妻のつねがからんでいたというのは面白いエピソード。こういう細かい部分が描かれるのは嬉しい限りだ。

【来週の展望】
来週は今週から1年後の1862年が描かれるようだ。藤堂平助も食客となるらしい。どんどん新選組メンバーが集結していくが、浪士募集まであと1年(1863年)という事になる。勇の長女・タマも生まれるようだし、歳三にも女性関係が浮上。その前後で坂下門外の変、寺田屋事件、生麦事件が起こるが、それはどういう風に描かれるか注目だ。このところほぼ1年に1日という描き方がされているが、1日をじっくり描ける分、その間の出来事をどうフォローしていくかがカギとなるだろう。三谷氏の手腕に期待したい。

第6回「ヒュースケン逃げろ」 (2月15日放送)

【物語】
万延元年(1860年)9月30日。勇(香取慎吾)は、周助(田中邦衛)に伴われ、歳三(山本耕史)と共に府中の六所明神で奉納試合を行う。多摩の豪農たちから多額の祝儀を受け、懐が暖かくなった勇と歳三は、立ち寄ったそば屋の近くに米国公使通訳のヒュースケン(川平慈英)が親しく付き合っている女性・お富(木村多江)が住んでいることを知る。  お富を一目見ようと家を張り込んでいた勇と歳三は、浪人風の男たちに捕らえられてしまう。男たちは攘夷思想の持ち主で、お富の家を訪れるヒュースケンを亡き者にしようと企てており、口封じのために勇と歳三の命を奪おうとする。しかし、偶然、一味の中にいた永倉新八(山口智充)のとりなしで危ういところを救われる。およそ三年ぶりの再会となった三人だったが、永倉が金目当てに、しかも闇討ち同然にヒュースケンを葬り去ろうとしていることを知った勇は納得がいかない。  そこで、勇と歳三はヒュースケンを待ち伏せして命を狙われていることを知らせる。話しをするうちに、ヒュースケンの日本を思う気持ちとその心に宿る武士道精神に感銘を受け、勇自身の外国人に対する見方にも変化が起こる。何とかヒュースケンを助けようとする勇だったが、襲撃者たちは説得に耳を貸そうとしない。結局、勇の一本気な純真さに心打たれた永倉の寝返りもあり、襲撃者は退散する。勇は永倉に「客分として試衛館に迎えたい」と誘う。また一つ、勇を囲む人の和が広がった…。
【牛嶋のズバリ感想文】
この1週間、スカパーで放送された新選組作品をいくつか見た。三船敏郎さんの『新選組』は近藤の首がはねられて終わるなど映像的にエグかったし、北大路欣也さん演じる沖田総司が戦死したのも衝撃的だった。また、草刈正雄さん主演の『沖田総司』は近藤以下全てが沖田の事を『そうし!そうし!』と呼ぶのが気になった。黒鉄ヒロシさん原作の『新選組』は三次元的立体というな手法を使って描いていたが、これが斬新でなかなか面白かった!江守徹さんのナレーションも味があって良かったが、ここでも『おきたそーし』と言っていたのが気になった。思えば新選組に触れていない人に限って”おきたそうし”と言うが、なぜ一般の人には”おきたそうし”で浸透しているか疑問である。今後、残りの2本(市川雷蔵主演の『新選組始末記』&河原崎長十郎主演の『新選組』)を見るが、特に新選組を批判的に描いた後者は必見かも。今後も数多くの新選組作品が放送されるのを祈るばかりだ。さて、古い作品を受けて今回の大河を見たが、映像が綺麗過ぎる事を改めて感じた。これも時の流れだが、フィルムで録るとよりリアルに伝わるのになぁ〜と、時代劇は伝統を守って欲しいと切に思った次第だ。では、6回目の感想をいきましょう。

@新たに表記された理由
今回から”近藤勇(27歳)”という表記になった。劇中にセリフやナレーションとして年齢は出てきても、スーパー(スーパーインポーズ)として出るのはとても珍しい事。これが出る事によって、勇が何歳なのか把握出来るのでとても良い事だと思う。しかし、初回からやらず、なぜ6回目にして初めて出したのか?それは@最初から27歳から表記するつもりだったAやはり年齢を入れた方が分かりやすいと判断したBドラマ制作経験のあるNHK幹部からの命令・・・などの理由が考えられるが、まぁ、理由はいいだろう・・・。いずれにしても、年齢のスーパーを入れたのはとても親切な事である。見ている人を意識した作りでとても好感が持てた。

Aおしどり夫婦だ
試衛館が行う”型試合の意味は?”などを純粋に質問する妻・つね。その表情に育ちの良いお嬢さんの姿はなく、心から近藤家の嫁として生きていこうとしている姿が伺えた。父・周助はその姿に笑顔を浮かべるが、相変わらず母・ふではおかんむり。誰しも、つねは可愛い!ふでは憎たらしい!と思ったのでは?その辺りのキャラ設定は抜群に上手いなぁと思った。そして、着付けを手伝う際につねの手を握る勇。”母上と仲良く”という勇の言葉に元気良く答えるつね。良い夫婦関係にある事を伺わせた。とにかく”良い嫁をもらった・・・”と、誰しもつねの姿に好感を持ったのでは?勇とツーショットのシーンがあったが、やはりタイプが良く似ていた。

B山南と惣次郎
近藤家親子のやりとりの後、1860年万延元年9月30日の表記が。先週(祝言)から約半年たった設定だ。府中で型試合が行われたが、”実戦的”と言われる天然理心流の型が披露されていた。ご祝儀も相当な金額になり、その費用も道場の修理や借金返済費にまわすとの事。とても庶民的な匂いがすると同時に、所々で優しい気持ちにさせるのはこの手のシーンを作ってくれるからだろう。普通なら描かない細かい部分を描くのが三谷流である。何度も言うが、決して見逃してはならない。そんな中、留守を努めていたのは惣次郎だった。”若先生はなんで連れてってくれないのか?”と疑問を投げかけるが、同じく留守役の山南が”誰が稽古をつけるのか?”と諭す。おまけに、”尊王攘夷を知っていますか?””なぜ井伊が殺されたのか分かりますか?”と質問をする。分からない、どうでも良いという惣次郎に対して、もっと勉強した方が良いと言う山南。聞こうとしない惣次郎にさらに”幕府の要人や異国人が斬られるでしょう”と言葉を付け加える。その辺りから山南の思慮深さが伺えたが、一方で”剣だけ・・・”という惣次郎の若さも伺えた。そう言えば、惣次郎を”塾頭”と言っていたが、まもなく”沖田総司”誕生か?

C洗濯物をうまく干すコツ?
つねの洗濯が遅いと指摘するふでは、惣次郎の姉・みつに対して、”何を言っても(つねが)にっこりする事が気にいらない。聞きわけが良すぎて鼻につく”と本音をぶちまけた。現代でもある嫁と姑との関係だが、間に割って入るみつは、つねから”洗濯物を干す前に伸ばしているから遅くなる・・・”という事を教えられる。”勉強になった”と言うみつだが、思わずこの時代の人は”それ”を知らなかったのか?と突っ込みを入れてしまった。どうでもいいシーンかもしれないが、もしかしたら、松井家の知恵が現代の世まで伝わっているのかもしれない(笑)。これからは、洗濯時にパンパンと叩く際、”松井叩き”あるいは”つねパンパン”と呼ぶようにしよう!

D視聴者の気持ちを託された歳三?
そば屋に入った勇だが、玉子がなくて玉子とじは作れない旨を伝えられる。そこで”ヒュースケン”という異国人が玉子を好んでいる事を知らされるが、”シュースケ”は私の父です・・・などと笑いを狙ったセリフで、さりげなく視聴者を盛り上げ?ていた。ヒュースケンはハリスの元で働いている異国人で、ヒュースケンには愛する女性がいるとの事。異国人が抱いた女を見てみたいと言う歳三だが、この時代、異国人に関わった人間は全て”異人”として見られていたのだろう。でも、歳三らしい考えで、これはヒュースケンと勇を強引につなげようとする展開にも思えたが、”異国人を好きになる女”は筆者でも見てみたいと思ったかも。好奇心旺盛の筆者だが、視聴者(筆者)の気持ちが登場人物に託された格好になってしまった。

E山口智充さんはもうお笑いから足を洗え!
ヒュースケンが愛した女性・お富を見た勇と歳三だが、数人の男に捕らえらてしまった。そこへ永倉新八がやってきて難を逃れるが、永倉役の山口智充さんの”面構え”に改めて惚れ惚れしてしまった。今後、名のある時代劇俳優になれるのでは?と思ったが、これは全て松方弘樹さんの物真似をしていたからか?筆者的には、もうお笑いから足を洗って俳優業に専念して欲しいが、いかがだろう?

F山口さんと永倉はリンクしている?
松前藩の仲間と薩摩藩士と組んで外国の要人を成敗している事を打ち明ける永倉。その報酬は1人につき10両。そして頭は庄内藩士の清河八郎だと言う。ご存知!浪士組を支配した清河だが、こんなに早く登場するとは!のちに新選組結成に大きく関わる事を、勇はまだこの時知らない。それはそうと、お笑いから足を洗った方がいいのでは?と指摘した筆者だが、”俳優だけでは食えないからお笑いをやる”という事情もあるかも。おおっ!それを考えると、今の山口智充さんと永倉新八はリンクしているのかっ!?

G勇を見続ける大きなポイント
ヒュースケンを斬る計画を打ち明けられた勇は永倉の行動に失望する。ただの人斬りでは?と勇が訴えても、稼がなければ生きていけない。目の前にある10両の仕事に飛びつくのは当然。私も大人になった。闇討ちも兵法のひとつである・・・と訴えた永倉。これこそ侍ならではの生き様という感じだが、納得出来ない勇は待ち伏せして、ヒュースケンに逃げるよう勧告する・・・。必死に身振り手振りで訴える勇だが、その姿を見て、こんなに正義感正しい、誠実な男が”あの厳しい局中法度”を本当に作れたのか?と思ってしまった。今は”世間を知らぬ若さゆえ”の事かもしれないが、そこまでに至る勇のこれからの生き方、心情がこれからの大きなポイントになるだろう。

H見逃すべからず!
”お前、本当は日本人だろう?”こんな発言をした歳三。ヒュースケンを演じているのが川平慈英さんだけについ笑ってしまったが、この歳三のセリフは、ヒュースケンがオランダ人であるという事を説明するためかっ?でも、歳三ならではの質問のような気もする。その後、日本素晴らしさを訴えるヒュースケンだが、女の人の話になった時、”西洋の女と違うのか?”とまたまた歳三が口を挟んだのには笑ってしまった。また、早くこの国から出て行って下さいと土下座して誠心誠意頼む勇に対して、投げやりな言葉で頼み込む歳三。これこそ土方歳三だ!登場人物の会話はただの会話にあらず!登場人物の言葉、行動は、登場人物ならではの”生きた言葉、生きた行動”である。細かいセリフ、行動を見逃すべからず!

Iヒュースケンはたまたま出会った男?
勇が勧告したにもかかわらず、お富さんが待ってるからと先を急ごうとするヒュースケン。さらに”女を残してあなたは逃げられますか?私の国にも武士道があるのです”ときっぱり言い放つが、この言葉に”日本人以上の日本人”を感じた事だろう。さらに言葉は続く。”もっと自分の国に誇りを持ちなさい。異国人の前でなぜおびえた目をするのです。自信を持ちなさい”これは今回の一番重要な場面だ。現時点では自分の生き方を決められないでいる勇だが、このヒュースケンの言葉には大きく影響を受けた事だろう。実際に勇とヒュースケンがこの時遭遇していて、こんな言葉を言われたとは考えにくいし、勇とヒュースケンの遭遇を強引だ!という人もいるだろう。しかし、勇の周りを囲んだ人間から、何らかの影響を受けた事は確かで、その相手がたまたまヒュースケンだっただけ・・・で、そう思えばおっけー!なのである。ちょっと強引な解釈ですか?

J大人だ!永倉!
必死に説得する勇に対して”近藤さん、あなたはいつも素直すぎる。あまりにも幼い。だからこそあなたの言葉は心に突き刺さる。また会えて良かった”と言う永倉。その後、薩摩藩士らが刀を抜く。そしてヒュースケンも・・・。しかし歳三がヒュースケンを制し、勇が立ち合う事に・・・。近藤勇対薩摩藩士という図式の中、そこにスーッと入り込んで勇の盾になる男の姿が・・・。なんと!それは永倉新八だった。訳あって寝返った!と薩摩藩士と相対する永倉。武士の誇りを思い出せと追い払うが、このシーンはカッコ良かった!予期していたとはいえ、カッコ良すぎ!勇は永倉のその姿や発言に大きな影響を受けた事だろう。ただただ、大人だ!永倉!これを強く感じた。

Kあの時開国していなければ・・・
”私はこの国で死ぬ。今回は助かりましが、いつかは斬られるでしょう。しかし、後悔はしない”予言とも取れる言葉を放ったヒュースケン。長年鎖国を貫いた日本に滞在した訳だから、来日した異国人はみんな死を覚悟した事だと思う。でも、国を挙げて攘夷を断行していたら、今の日本はなかっただろう。あっても数十年日本は遅れていたと思われる。今の某国のように・・・。それを考えると、幕末は日本の歴史上最大の転換期だったと思う。

L山口新八を絶賛する
10両という報奨金を逃した永倉だが、今後は試衛館の客分として迎えたいと勇に声をかけられた。こいつは年下だぞ!と言う歳三だが、”再会したのも何かの縁です。厄介になりますか・・・”と永倉は了承する。それでも歳三は”こいつはまだ22のはずだぞ”としつこく年齢を気にするが、”男は見た目だ!”と一喝する勇。対照的な”局長”と”副長”だが、志は同じでも2人の”生き方の違い”を感じさせた。でも、永倉の”厄介になりますか・・・”という言いまわしはカッコ良かった。筆者は山口智充さんを絶賛する!

Mあえて異論を唱える!
本編終了後、いつも新選組ゆかりの地を紹介する”解説”が入る。本編とは違った角度から迫っているので毎回関心しながら見ているが、今回はあえて異論を唱えさせてもらう。試衛館があった場所、今でも天然理心流の伝統が守られているという事、実戦的な菱割、竜尾剣が紹介されていたのは確かに良かった。しかし、今回は絶対にヒュースケンについて説明すべきだったのではないか?今回のタイトルにもなり、”いずれ誰かに斬られるだろう”と予言して終わった事を考えると残念でならない。1年後、ヒュースケンは”予言通り”この世を去るが、その顛末を説明して終えて欲しかった。ヒュースケンが再登場するなら話は別だが、今回こうして大きく取り上げられた事で、ヒュースケンの再登場はないと筆者は見ている。どうですか?みなさん!

【来週の展望】
タイトルにもあるように、来週は正式に四代目を襲名する勇。”武田信玄みたいだなぁ〜”と言われていたが、なぜ武田信玄を例えに出したのだろうか?それは来週の放送を見ないと分からない。そして坂本龍馬とも再会。惣次郎も総司と改めるらしいし、原田左之助も再登場する。とにかく期待しよう!

第5回「婚礼の日に」 (2月 8日放送)

【物語】
安政7年(1860年)3月29日。27歳の勇(香取慎吾)と、武家の娘・松井つね(田畑智子)との婚礼の日がやってきた。密かに憧れていたみつ(沢口靖子)に着付けなどを手伝ってもらう勇の心中は複雑そのもの。そんな勇だったが、多摩から祝いに駆け付けた実兄の宮川音五郎(阿南健治)から、宮川家に代々受け継がれてきた下帯を譲り受け、感無量になる。一方、試衛館道場の食客たちも、惣次郎(藤原竜也)は宴席で披露する剣技の稽古に余念がなく、山南(堺雅人)は来客の取り次ぎ役を買って出、源三郎(小林隆)は台所の差配にと、それぞれの持ち場で勇の婚礼を手伝う。そんなところへ、伊東道場の使いとして惣次郎と顔見知りの藤堂平助(中村勘太郎)が祝儀を届けに来る。だが、江戸の名だたる道場へ案内状を送ったにも関わらず道場関係の出席者が無いことに、歳三(山本耕史)は苛立ちを隠せない。とは言うものの、呼んでもいない捨助(中村獅童)が魚屋を引き連れて現れたり、練兵館道場の桂小五郎(石黒賢)が主役気取りで時勢を演説したりと、祝宴は大賑わいを見せる。ところが、祝宴の最中に手傷を負った山口一(オダギリ ジョー)が逃げ込んで来たことで雲行きが怪しくなる。一度は勇から資金を借りて逃走を図った一だったが、追っ手の役人たちを交わし切れずに再び試衛館に舞い戻って来る。一をかくまうことを決意した勇と、押しかけた役人たちとの間で一悶着起きるが、桂の口添えもあり、何とかその場を切り抜ける。一を江戸から逃がすため、ある確信を胸に、勇は水戸浪士・芹沢鴨(佐藤浩市)の元を訪ねる。…。
【牛嶋のズバリ感想文】
回を増すごとに楽しさが増していく今年の大河。早く京都での新選組の勇姿を見たい気もするが、ここは我慢。”序章”をじっくり楽しむ事にしよう。それでは、5回目の感想いきましょう!

@情が入ってきた
先週のおさらいは、勇の人柄を慕って仲間達が勇の元に集まってくる様子を紹介していた。その際、土方歳三、沖田惣次郎、山南敬介、芹沢鴨、山口(斎藤)一らの映像を交えていたが、こうして毎週どんどん増えていく事になるのは嬉しい事。登場人物をじっくり描く事で、登場人物とそれを演じる俳優に見る側の情も込められていくのである。筆者も、近藤勇=香取慎吾くん、沖田惣次郎(総司)=藤原竜也くん、土方歳三=山本耕史くんらに対して徐々に思いを深めていくのであった。そんな動きと並行して、水戸脱藩浪士らが井伊直弼を暗殺した”桜田門外の変”を目の当たりにした勇。長かった平和の時代の終わりを予感させた・・・と、先週最後の部分を紹介した上で5回目がいよいよスタート!

A1話1日を楽しもう!
今週は山口(斎藤)が追っ手を逃れる場面からスタート。その後、”1860年3月29日”の文字が映し出されたが、先週が3月3日の”桜田門外の変”で終わっているから、今週の物語はそれから約1ケ月経った所からという事になる。毎回この”時”を表した表記が映し出されるが、話によると三谷氏は1話で1日を描きたいとの事。その為に、勇にとって大事な49日(全49話)を選んで最終回までの流れを作ったという。先週のように1話2日という事もあろうが、この辺りの”位置づけ”を把握した上でドラマを楽しみたいものだ。

B下帯の価値とは?
勇の祝言が行われようとしていた。時代劇で祝言の様子を見るたびに、昔の人はこのように勝手に嫁が決められるのかぁ〜、今は幸せな世の中だよなぁ〜と思うが、この時代の人たちは”当たり前の事”と認識していたのだろう。特に名のある人は全て政略的に結婚が決まっていた訳で、そのような状況の中でどう夫婦関係が築かれたのか不思議である。それを考えたら、恋愛結婚なんて町人だけの特権だったのではないか・・・なんて思ってしまったが、それはさておき・・・。勇は徳川御三卿の清水家家臣・松井八十五郎の娘・つねを迎え入れる事になった。宮川家からは兄・宮川音五郎もお祝いに駆けつけ、”立派になっていくのが生きがいだ”と、宮川家を継いだ際に父から譲り受けた”下帯”を贈られた。宮川家の男子がここぞと思った時に締める由緒あるものらしいが、それににっこりと応える勇。今の時代からするとパンツを送られて何が嬉しいのか?と思うが、この時代ならではのエピソードであろう。一度着た裃を脱いで下帯を締める勇。”祝言”という出来事に勇の気合が入っている様子が伺えた。やがて祝言が始まるが、勇は祝言の間ずっと下帯(ふんどし)を締めていたと思われる・・・。わははは。

C途中のカット
ドラマでは時間の経過を視聴者に感じさせるため、主人公以外のシーン(場面)を途中で挿入するが、勇が祝言の準備をしている中、惣次郎が木刀を振っている様子、一が血を流して逃げている様子を入れていた。短いカットだが、これがのちのちの物語に通じる事を考えるととても効果的である。主人公が動けば、周りもみんな何かしら動きがある訳で、三谷氏の描くシーンには無駄なモノは何もない。何気ないシーンでもしっかり画面を見つめようと思った次第だ!

D田畑さんの起用
祝言で初めてつねと対面した勇だが、勇の目にはその姿はどう映った事だろう。綿帽子ではっきりと顔が見えない中、ちらっと顔を見ようとした勇の動きは、まだ見ぬ相手をどういう人なのか?と不安に思う勇の心理を表していた。妻・つねを演じるのは、失礼ながら決して美人タイプではない田畑智子さん。連続テレビ小説『私の青空』の主演を努めたので、知名度のある女優さんと言えるが、大河の慣例を考えたら地味な女優さんであるのは間違いない。だいたい主人公の奥方なら、それ相当の美人タイプの女優を起用するものだ。そんな中で田畑さんを勇の妻に据えたのは、何か意味あり気に思えて仕方がない。筆者が思うところ、まずは香取くんの個性に合った女優である事を一番に考え、香取くんと正反対のタイプよりも、香取くんと似たタイプの女優さんにしたのではないかと思われる。また、最期は斬首される勇だが、つねは武家の娘らしく力強く生きた事から、地味で演技派の女優さんがふさわしいという点を元に人選したと思われる。もちろん、NHKでの実績という点もポイントになっているだろうが、単にそれだけではないような気がする。まさに田畑さんは選ばれるべくして選ばれたのである。

E三谷氏の挑戦!
祝言の応対役(受付)は山南敬介が行っていた。知らぬ間に試衛館の門人になっていたが、その経緯(山南の心理)をもう少し説明して欲しい気がした。先週のやり取りだけで十分なのかもしれないが、筆者のこの気持ちは、ナレーションを全て排除しているがために生まれた”現象”である。ナレーションがないと、細かい部分の説明は、登場人物のセリフでしか補えない。『私は押しかけ門人・・・』という山南のセリフがその典型的な例である。だからと言ってナレーションを入れるべきとは思わないが、ナレーションひとつで簡単に片付いてしまう事もあるのである。それでも中途半端に入れるくらいなら、入らない方がいいし、あまり入りすぎても、うっとおしいだけだったりする。また、ドラマは登場人物と視聴者の世界。そこに別の世界から口出し(ナレーション)してくると違和感があったりする。だから、ナレーションを入れる入れないの判断はとても難しいが、1年という長い間描くドラマでナレーションがないのは、今までに例がないのでは?でも、ナレーションを入れないで番組作るのはとても難しい事なのである。これは三谷氏の挑戦と見た!

E”平助”という当たり役
勇の祝言には江戸の名だたる道場に招待状を送ったらしい。が、出席したのは練兵館の桂小五郎ただ1人だけであった。桂が来る前、北辰一刀流伊東道場の藤堂平助が主の遣いとしてやってきたが、ご存知!この男こそのちの新選組八番組長である。池田屋事件の時は額を割られる大怪我をするが、のちに伊東一派らとともに新選組を離れ、同志との決闘で命を落とす事になる。享年23歳。新選組最年少で、山南敬介を兄のように慕っていたとも言われ、今回の大河における重要な役どころである。惣次郎が『平助!』と呼び捨てにするくらい2人は仲が良いようだが、平助はこの時16歳。惣次郎の『また背が伸びた!』というセリフに、まさに育ち盛りである”今”が描かれていた。このような細かいセリフは毎度の事ながらお見事!である。平助は育ちの良さもあるのか礼儀正しい純朴な青年だったが、この性格がのちの悲劇を生む事になる。役は中村勘九郎さんの長男・勘太郎さんが演じているが、”当たり役”となるよう期待したい。それにしても成長した勘太郎くんは勘九郎さんそっくり!将来は大河の主役を演じるほどの俳優になって欲しいものだ。

F祝言は最大のイベント
祝言に声を震わせるほどの喜びを表した父・周助。相変わらず母・ふではむっつりしていたが、ここではっきりと宗家四代目を継いで欲しいとの言葉が出た。翌年正式に天然理心流・四代目宗家を継ぐ事になるが、祝言というのは今と同じく”人生の最大のイベント”であった事を窺わせた。まさに大人の仲間入りという事なのか?

G何が勇の心を動かしたのか
祝言の途中台所において、沖田の姉・みつが『花嫁さんは?』と勇に尋ねる。すると勇は『お色直し』と答えるが、この時からお色直しの風習があったのか!?とても面白いエピソードだと思った。そんな中、勇は、祝言によって自分の生きる道が決められていく事に不安を感じている事を沖田の姉・みつに打ち明ける。その背景には、黒船がやってくるなど時代が動いているのを感じ取った事があるが、『じゃぁ、何をするの?』という問いに対して『それが分からない』と答える勇。やがて江戸の浪士隊に加わる事になるが、この頃から自分の人生について模索していたと思われる。やがて何が勇の心を動かしたのか?今後の動きに注目だ。

H良い役だ!井上源三郎
井上源三郎が良い味を出している。”所帯を持つ事は守りに入る?”と悩む勇に、『守りではなく攻めに転じる時。これからは1人ではなく、家族で悩める』と言う源三郎。兄弟子とは言え、勇を近くから見守るその姿勢はとても好感が持てた。その後、血を流した山口一が試衛館を訪れるが、刀を出そうとする一を抑える姿に、『お前は奉公人ではないのか?』と山南の一言。勇の兄弟子である事を知り、『これは失礼!』と言う山南だったが、”井上源三郎”の存在感を見せつけた瞬間でもあった。のちに鳥羽伏見の戦いで戦死するが、源三郎なくしての”新選組局長”はありえなかったのではないだろうか?

I勇の器
祝言の際に初めて勇とつねは2人だけで対面した。平穏な日々を望むならあきらめた方がいい。一介の道場主になるつもりはない。天下のために捧げようとしていると告げる勇に、ただ頷くだけのつね。今と違って相当の覚悟で嫁入りする時代背景を窺わせた。守りではなく攻めに転じる時・・・と、源三郎の言葉をそのまま使っていたのはとても細かい演出だったが、そんな中で試衛館に逃げ込んできた山口一が登場。左腕の傷は借金の取りたての際に斬られ、その傷は相当深いものと思われるが、しばらく隠まって欲しいと願い出る。しかし、祝言の途中で隠まう事は出来ないと答える勇。それでも金を貸してくれと頼む一に、2〜300文ならと答える勇。そこへつねがお金を差し出す。『いいのか?』との問いに頷くつね。5両ものお金に『このご恩は生涯忘れません』と答える一。まさに器の大きい勇のエピソードである。

J嘘のつけない男・勇
祝言には勇の幼馴染である滝本捨助もやってきた。相変わらずのキャラで、この人物が出てくるだけで明るくなるから楽しい存在だ。かっちゃん、かっちゃんと呼ぶ捨助に、『かっちゃんとは?』と尋ねるつね。それに対して『前は宮川勝五郎という名前だった』と素直に打ち明ける勇。嘘のつけない男だったという事がよく分かる。勇の元にたくさんの仲間が集まってきているが、そうした真っ直ぐな部分にみんな惹かれたのだろう。

K山南が鞍替えした理由とは?
やがて桂小五郎が祝言に顔を出した。受付をしていた山南に『本当に天然理心流に鞍替えするんですか?』と尋ねるが、『ここの若先生が気にかかって、どんな人物かこの目で確かめている所です』と答える山南。ここで試衛館入りのきっかけがはじめて説明されたが、免許皆伝したにもかかわらず鞍替えした部分は、やはりもっと説明して欲しかった。単に勇に敗れただけからではあるまい。でも、その辺りは今後の勇とのからみで明らかになっていくのか?実はその説明たるやドラマの最後に隠されていたのであった。

Lいずれ内閣が倒される?
『賑やかな事は控えた事がいいだろう』と言いながら、いきなり演説を始めた桂。『桜田門外の変について。幕府は関わった人を探しているが、江戸に彼らの逃亡を助けている人がいる。しかし、陰謀にかかわった人を見つけられていない。もう幕府の威信は地に落ちた。水戸だけが攘夷の先鋒であった時代は終わる。我が長州も動く時が来ました』と言っていたが、桂こそこんな事を堂々と口にして良いのか?と突っ込みを入れたのは筆者だけではないだろう。それにしても毎回思うが、この時代はなぜ若くして日本を動かせるような存在になれたのだろう?今は若手国会議員でも世を動かすのは困難な世の中。民主主義が確立されていない当時ならではの事だが、若い感覚だからこそ様々なアイデアを駆使して世の中を動かせたと思える。現在は年金改革など様々な問題が浮上しているが、全て議員寄りに決まってしまう現状に、若い世代の政治離れが進んでいる。しかし、時代は巡る・・・というから、いずれ”内閣を倒す”などという現象が生まれるのか?なんて事を考えてしまった筆者であった。

Mより一層勇への信頼が増した出来事
勇の助けがあって5両もの金を手にする事が出来た一だが、その後あっさり役人に見つかってしまった。一は試衛館に引き返す事になるが、飛び込んだのは宴の場であった。いきなりの事で出席者はみんなびっくりするが、妻・つねが『あのお方は夫の友人です』とはじめて大きな声を発してその場を収めた。これはナイスな演出!思わず拍手を送った視聴者も多かったのではないか。ここまで一言も発しなかっただけにその言葉の重さを感じた。役人に引き渡す訳にはいかないと、怒りの母・ふでを諌めるほどの緊急事態となったが、勇の言い分がまたあっぱれだった。『たいした知り合いではないのに俺を頼ってきた。侍とはそういうものだ!』これこそ勇の人間性を表すエピソードではないか。これで一は一生勇に恩義を感じて、勇をサポートし続ける事になるのだろう。その後、役人が宴の席にやってきた。一は出て行こうとするが、逃げ延びてもらうしかないと言う歳三。ここから、この場にいる全員による一の擁護が始まった。『この血はなんだ!』と問いかけれれるも、『それは鼻血です』と答える勇。ひじで捨助を突き鼻血を出させるのには大笑いしてしまった。また、『埃くさい男が・・・』という問いにも、『それは私です』と勇の兄・宮川音五郎が名乗り出た。そう言えば祝言の前に埃の話をしていたが、ここに通じていたのかと思うと、なるほど!と筆者は拍手(かしわで)を打ってしまった。結局、桂が”有備館御用掛りをつとめている”と一喝してその場が収まるが、今回のこの出来事は勇の人柄をより一層引き立たせたのではないだろうか。それは最後の山南の言葉に集約されていた。”あなたを頼ったという事””ご新造さまが夫の友人ですと言った事”。誰しもこの出来事を、一の為ではなく勇の為に動いた事と分かっていたが、この一件で勇に対する尊敬の念がより深まったのは間違いないだろう。一方で、説明もなく試衛館に鞍替えした山南の気持ちが分かったような気がする。筆者が説明不足!と指摘した点はここで結論が出た!決して説明不足ではなかったのだ。

N”オダギリ”一の目
今回のオダギリジョーさんの演技にはとても光るものがあった。勇を頼って試衛館に逃げ、やがて芹沢鴨により逃亡を助けられる・・・そのやり取りの中、終始目が潤んでいたのは恩義を感じる一の心情を表していた。あの斎藤が・・・!?とも思えるシーンではなかっただろうか。改めて言うが、オダギリジョーさんの目はとても良かった!

O似た者同士だ
祝言だけでも大きな出来事なのに、途中、突然血を流した男や奉行所が乗り込んでくるなど、大変な1日を過ごした勇とつね。晴れて新婚初夜を迎えたが、『お疲れさまでした。どうぞよろしく・・・』とお互い頭を下げるなど、似た者同士という印象でとても微笑ましかった。視聴者全てがつねの人間性に好感を持ったのではないだろうか。これから良い夫婦像が描かれる事だろうが、実質3年の結婚生活とは誠に持って残念だ。短い期間だが、勇&つね夫婦に注目だ。

【来週の展望】
来週は米国公使通訳のヒュースケンが登場。タイトルになるほどじっくり描かれるようだが、勇も外国人襲撃の企てに巻き込まれるという。その展開に大いに期待したいものだ。永倉新八とも再会するとの事で、新選組結成以前に隊士との関係がいろいろ描かれるのは嬉しい事である。いかに勇の周りを囲んだ者に個性があったか・・・それを知るには”新選組”格好の題材と思われる。きっとドラマをより一層面白くさせる事だろう。早くも来週が楽しみだ。

第4回「天地ひっくり返る」 (2月 1日放送)

【物語】
勇(香取慎吾)の祝言話は、勇本人の意思とは関係なくトントン拍子で進められる。また試衛館道場の方は、日常の世話をしているみつ(沢口靖子)の男勝りな性格もあり、活気に包まれた毎日が続いていた…とは言うものの、惣次郎(藤原竜也)や歳三(山本耕史)らが食客として居座っているため、ふで(野際陽子)の機嫌はますます悪くなる一方で台所事情も火の車になっていた。稽古代の払いが滞っている門人・広岡(橋本じゅん)の住まいを訪ねた勇は、そこで山口一(オダギリ ジョー)と出会う。一もまた、広岡の借金を取り立てるためにやって来たのだった。当の広岡は、料理屋の主人に身をやつしている水戸藩の浪士・芹沢鴨(佐藤浩市)という男の手引きで、料理屋の裏口から逃げてしまう。明日の朝を楽しみにしていろ、天地がひっくり返るぞ!芹沢が残した言葉が勇には気にかかる。一方、勇が留守にしている間、試衛館では“道場破り”で一騒動持ち上がっていた。すぐに、道場破りというのは源三郎(小林隆)の勘違いで坂本龍馬から勇の評判を聞いた者が勇を訪ねて来ただけだと分かる。しかし、相手は北辰一刀流の浪士・山南敬助(堺雅人)。「天然理心流の名を高める好機」とばかりに、歳三が周助(田中邦衛)を説き伏せ、塾頭の惣次郎と手合わせをさせるが惣次郎はあっけなく敗れてしまう。翌朝、「江戸城桜田門外で、大老・井伊直弼が水戸浪士達に暗殺された」と聞いた勇は現場に駆けつける。雪が降り積もった襲撃現場には無残な亡き骸が転がり、襲撃のすさまじさを物語っていた。自害して果てた広岡の姿を見つけた勇は言葉を失う。その勇の耳に、「尽忠報国の士、あっぱれなりっ」と叫ぶ芹沢の声が響く…。
【牛嶋のズバリ感想文】
大河ドラマ『新選組!』も4回目が終了!4回を終えてハッキリした事がある。それは・・・今年の大河は間違いなく面白い!という事。これを確信した回だった。今回は、新選組にとって重要人物である芹沢鴨、斉藤一が登場!見ている人はますます興味が膨らんできたのでは?それでは今回の感想文にいきましょう。

@我々もただボーッと見ていてはいけない
今週の冒頭も”先週のおさらい”からだった。勇の縁談に大反対して母・ふでが家出。勇と歳三は超えがたい身分の壁に悩まされた・・・そんな小寺アナウンサーの件(くだり)だったが、この冒頭のおさらいは、先週何を一番描きたかったのか分かる道標となる。1年というロングランの大河だが、1回1回にテーマを持って描いているので、我々もただボーッと見ているだけではいけないのである。1話1話噛み締めて見る事で、ドラマをより面白く感じる事が出来るのではないだろうか。あくまでも自論だが・・・。

A描かなくていいモノがある
”先週のおさらい”の後は、先週と同様に現在の日本の情勢を解説していた。これは主人公の勇の動きと世の中の動きがうまくリンクするとても良いスタイルであり、このまま毎週続けて欲しいと思う。幕府は朝廷の許可を得ずに開国を強行。それに反対する水戸藩を中心とする攘夷派は、朝廷を動かし幕府を激しく批判した・・・。両者の対立によって大老・井伊直助による徹底的な弾圧を招き、今、その緊張は頂点に達していた・・・。う〜ん、いいじゃないかぁ〜。一方で、この一連の動きも並行して映像で描いて欲しい気もするが、実はこれを描いてしまうと、あれもこれもとなって、ひとつの出来事をじっくり描けなくなってしまうのである。実はそれで去年の武蔵は大失敗したのだ。武蔵に徳川家康まで出してしまうなんて想像もつかなかった。筆者はNHKスタッフの知識自慢合戦をするな!と激しく非難してしまったが・・・おっと、また武蔵を思い出してしまった(笑)。要するに、このドラマの主役はあくまでも新選組である。新選組の視点で描かなければいけないのだ。それを我々も忘れてはならない。その辺りは、さすがに三谷氏は良く理解していると思う。今週は、安政7年3月2日からスタート。あの桜田門外の変の前日である。日本の動きを大きく変えた出来事だったが、まさか自分が京都に上る事になるなど勇は想像もしていなかった事だろう。

B勇の妻に期待
勇が祝言をあげる事になった。相手は徳川御三卿の清水家家臣・松井八十五郎の娘・つね。結婚して3年後には浪士として上洛する勇だから、約3年の結婚生活であった事になる。その辺りはこの時代ならではの悲劇?だが、つねを演じるのはNHK連続テレビ小説『私の青空』で御馴染みの田畑智子さん。あの”なづな”が息子の太陽とともに力強く生きている様子が思い出されるが、続編も放送されるほど好評を博したドラマだった。近藤勇に妻がいるのを知らなかった人も多いだろうが、妻の存在はきっとドラマを大きく膨らませてくれる事だろう。田畑智子がどんな妻を演じるのか期待したい。

C食格とは・・・
家出から戻った母・ふでは相変わらず勇に対して冷たくあたった。食卓ではメザシが1匹減り、その理由は居候がいるからだと言う。勇は”食客ですから・・・”というが、”ただの居候ではないですか!”と一喝されてしまった。筆者はここで辞書をひく・・・。”しょっかく”とは何か?ドラマの中では”客人だが、家族同様に暮らす人の事”と言っていたが、辞書にはこう書いてあった。@他人の家に住み込んで申しわけ程度の用をして食べさせてもらっている人。いそうろう。A客分として、自分の家に抱えておく人。とあった。なるほど!恥ずかしながら筆者はこの言葉を知らなかった。現代では使わない言葉で、時代劇ならではかもしれないが、こういう細かい言葉が出てきて良い勉強になった。それと、母・ふでは周助の九番目の奥方だったという裏話。これは面白かった!というより知らなかった!びっくり!

D経営が危なかった試衛館?
井上源三郎、土方歳三、沖田惣次郎と三人の食客を抱えながら門人が増えなかった試衛館。実際の所はどうか分からないが、経営ぶりがドラマの中で話題になるのはとても新鮮だった。道場拳法ではなく、実践拳法であったと言われる試衛館。この時代においてどのくらいの知名度があったのだろうか?そんな中、門人を増やすために知恵を出す歳三。御家人や旗本ばかりではなく、町人を相手にしては?売り文句は貴殿も侍になれる!というアイデアは、筆者も関心してしまった。この辺りから早くも名参謀ぶりが垣間見えたが、宣伝しようにもその資金が足りず、その前に溜まっている稽古代を取立てる事が先決と動き出す。それが様々な人たちとの出会いとなるのである。うん。いい流れだ!

Dオダギリさんに期待
まずは入門以来、一度も稽古代を払っていない広岡子之次郎を取り立てる事になった。勇は祝言の打ち合わせ(顔合わせ)を”苦手だ”と回避して広岡の家へ。しかし、あいにく広岡は不在であった。そこへやってきた男に、勇は広岡と間違えられてしまうが、その男こそのちの新選組副長助勤三番隊組長・斎藤一であった。山口祐助の次男として生まれたので現在は”山口”だが、山口次郎、一瀬傳八(一戸伝八とも)、藤田五郎などと名を変えた不思議な人物である。新選組が描かれる際には必ず登場し、沖田総司と並ぶ剣客であったというのは余りにも有名な話。普段は無口だが、酒を飲むと人を斬りたくなるという事から”殺人剣”とも言われていた。壬生義士伝でも吉村貫一郎に斬りかかる演出がなされたほどだ。斎藤一を演じるのはオダギリ・ジョーさん。岡山県津山市の出身で、筆者の会社にも一度訪れた事がある。また、ひょんな事から筆者はオダギリさんのお母さんと電話で話した事があるが、とっても感じの良い明るいお母さんで、1時間もの長電話をした事があった。それだけで筆者にとっては身近な存在のオダギリさんだが、目付きのギラギラした所は斎藤一に適役。今はもう仮面ライダーのイメージはない。とにかくオダギリさんに期待しよう。来週も動きがある!

Eここだけ年齢のバランスを無視?
家に帰ってきた広岡子之次郎は、お金は明日まで待って欲しいと願い出て、そのまま逃走してしまった。そんな中、水戸脱藩士・芹沢鴨が登場!ご存知!のちの新選組筆頭局長だが、実は広岡を逃がしたのが芹沢で、広岡とは同郷のよしみであったという。そして、”広岡子之次郎の名を覚えて損はない。明日、天地がひっくり返る出来事がある”と勇に告げる・・・。芹沢鴨を演じるのは佐藤浩市さん。芹沢は勇よりも2つ年上であるが、佐藤さんと香取君は実に17歳の年齢差。出演者の年齢バランスが悪いのでは?と思ったが、芹沢=佐藤・・・これは三谷氏がこだわりを持ったキャスティングのような気がする。ここだけは年齢のバランスを無視してでも、佐藤浩市さんに芹沢鴨を演じてもらいたい・・・そんな三谷氏の思いがあったのでは?と筆者は推測する。聞くところによると、父親である三國連太郎さんも芹沢鴨を演じた事があるらしい。どんな芹沢像が描かれるのか楽しみだが、個人的にはどんな死に様になるのか楽しみだ。同時に、どうして佐藤浩市さんでなければならなかったのか?を筆者は注目したい。

F山南敬介が登場!
勇が広岡の家に取り立てに行っている中、北辰一刀流の山南敬介なる人物が試衛館を尋ねてきた。歳三は道場破りと勘違いすると同時に、試衛館の名前を売るにはちょうど良いと惣次郎を立ち合わせるが、歳三、周助の願いも空しく、惣次郎は突きであっけなく敗れてしまった。その後、道場に帰った勇と立ち合うが、わざと剣先をずらして勇に勝負を譲ったのだった。道場破りではなく、坂本龍馬から、”近藤勇は面白い人物”と薦められて会いに来たと言うが、この後、山南は試衛館の食客となる。ご存知!のちの新選組総長で、新選組を脱走し、局中法度に反した為に切腹させられるが、それをどう描いて行くのかこれも楽しみだ。それはそうと、敗れて落ち込む惣次郎・・・というのは新鮮だった。

G桜田門外の変
”明日は天地がひっくり返る事が起きる”と言った芹沢だが、大老・井伊直弼が水戸浪士に桜田門外で討たれるという大事件が発生した。教科書にも載るくらい有名な出来事だが、この出来事が日本を大きく変えたと言っていいだろう。そして、”広岡子之次郎の名を覚えて損はない”と芹沢は言ったが、なんと!井伊を襲った水戸浪士の1人が広岡だったのだ。広岡は重傷を負って酒井雅楽頭の屋敷外で自ら命を絶ってしまうが、現場に駆けつけた勇は、これをどんな気持ちで受け止めた事だろう。広岡が試衛館にいた事実は分からないが、今後、”世の中の動き”と”自分の運命”がリンクしてくるという演出をするためにはうまい設定だったと思う。これをひとつのきっかけとして、京都守護職設置⇒浪士組の組織⇒上洛⇒分裂⇒新選組結成という流れになる。

H桜田門外の変の勝手な解釈
重要な出来事である桜田門外の変だが、井伊を討ち取った場面は思った以上に軽く、なおかつ簡単に描いていた気がする。軽く・・・というのは、水戸浪士が井伊を討ち取る場面に、なぜもっと時間を割かなかったのか?という事だ。事実、筆者は見た瞬間、”これで終わりかよ!”と突っ込みを入れてしまったくらいだ。でも見終わった後に、なぜ軽く描いたのかを推測する事が出来た。これはあくまでも自論だが・・・今回の大河はあくまでも勇の視点で描かれている事。井伊を斬った場に勇は立ち合ってない。しかし、井伊を討ち取った後の桜田門外には立ち合って、その様子を目にした・・・。事実、近藤が桜田門外にいたとは考えにくいが、人が大勢倒れ、その中には自分の知り合いである広岡がいた・・・。この場面を作る事で、井伊を討ち取るシーン以上に桜田門外の変をリアルに描けた気がする。だから・・・井伊が討たれたのに時間を割かなくても全然問題ないのである。あくまでも勝手な解釈だが・・・。

【来週の展望】
来週は勇の婚礼が行われる。そして藤堂平助が登場。ご存知!中村勘九郎さんの長男だが、成長した姿に注目だ。それと、山口(斎藤)一も2週続けて登場。一悶着起こるようだが、とにかく楽しみである。

第3回「母は家出する」 (1月25日放送)

【物語】
安政5年(1858年)8月、江戸。勇(香取慎吾)は、偶然再会した龍馬(江口洋介)から土佐に帰ることを打ち明けられる。勇は龍馬から紹介された越前・福井藩士の橋本左内(山内圭哉)も一緒に自宅に招き、二人が交わす天下国家の話に大いに刺激される。しかし、そんな話の最中にも、養父・周助(田中邦衛)と養母・ふで(野際陽子)の激しい夫婦げんかや、ふざけ合って道場を走り回る門人の沖田惣次郎(藤原竜也)と井上源三郎(小林隆)のせいで、大事な話に集中できない。周助が独断で勇の縁談を決めようとしたことが原因で始まった夫婦げんかは、周助の「わしが決めたことには黙って従え!」という一喝で、ふでの家出にまで発展してしまう。天下国家のために何かしなければと考える勇だが、日常のささいな事柄にがんじがらめになってしまう。侍を気取るのは止めて、己の出自、身の程をわきまえよ。家出したふでを説得に行った勇は、ふでから厳しい言葉を浴びせられる。その言葉の裏には、自らの出身に激しい劣等感を抱いているふでの、同じ農民出身の勇に対する複雑な思いがあった。一方、薬の行商をしている歳三(山本耕史)は、詐欺まがいの道場破りで町道場に薬を売りつけていたのを相手に知られ、門人たちに袋叩きにされる。ふでの家出がようやく一件落着した頃、全身傷だらけで勇の前に現れた歳三は、「強くなりたい。試衛館に入門させてくれ。俺は武士になりたい」と勇に頼み込む…。
【牛嶋のズバリ感想文】
まずはじめに、MANOEさま運営の新選組私設ファンサイト2004年度NHK大河ドラマ「新選組!」からリンクのお願いを頂きました。みなさんは私のページを見るまでもなくご存知だと思いますが、大充実した内容で、実は『ここにリンク貼れないかなぁ〜』と密かに思っていました。そんな中で連絡を頂き大変嬉しく思い、二つ返事で了解をさせて頂きました。是非、まだ見ていないという方はご覧下さい。凄く充実していて感動しますよ。ここから行けます。なお、私も近日中にリンクページを作る予定ですので、新選組もしくは時代劇に関するオススメのページなどありましたら、積極的に情報を頂ければ嬉しいです。相互リンクも大歓迎です。よろしくお願いします。

さて、3回目。今回も非常に楽しく見る事が出来た。ツボを押さえているというか、要所要所でちゃんと演出されている点はお見事!さぁ、それでは今週の感想文いきましょう!

@冒頭の解説
冒頭での解説は、先週の”おさらい”からだった。”おさらい”といっても、あれもこれもではなく、先週ポイントになった事だけをしっかり捉えて、今回の物語をより一層楽しませる工夫をしていた。先週は”天下の近藤勇”が人を初めて斬ったが、その事を一番伝えたかったというのが良く分かった。また、ちゃんとナレーションを入れて説明していたが、NHKの小寺アナのナレーションもシンプルでとっても良い。そしておさらいと同時に、今は安政4年で日本は開国をせざるをえない状況である事。それに反対する吉田松陰と橋本左内ら攘夷派への弾圧が始まろうとしていた。そしてそれが安政の大獄という大事件に発生する事・・・と、今週からの見所をしっかり解説していた。素晴らしい!さらには、『あなたのその剣が求められる時が必ずやって来ます。2人力でこの時代を斬り結ぶのだ!』という、先週放送の土方為次郎の重みのある言葉で締めてスタートさせていた!全てがリンクしていて、まさにドラマのはじまりにふさわしいと言える。ビデオでこの部分だけ何回も見たが、同じ番組制作者の視点から、誠に持って見事!である。

Aこの作品は三谷氏のオリジナルストーリーである
本編は、江戸で坂本龍馬と勇が会うシーンからスタート。勇の道場に招くなど、2人はすっかり親友のような間柄になっていたが、筆者はこの時点で2人がどういう関係にあったのかは分からない。史実と違うのでは?とも考えられるが、この時代は数多く記録が残されているとはいえ、人がどう接触を持ったのか細かい点は不明なのである。現に龍馬はこの時江戸にいた訳だし、第1話のように桂と勇がなんらかの接触をしていた事も考えられるのである。よって、あらゆる可能性があった中で、『史実と違うのでは?』と指摘するつもりはない。この作品は三谷氏のオリジナルストーリー。原作があっての三谷氏ではなく、”三谷氏の作る新選組”である。それをしっかり理解して見るべきである。

Bおいしいシーン
福井藩士の橋本左内が登場した。登場するやいなや、既に追われる身となっていたが、左内は安政の大獄で2年後に斬罪に処される事になる。それを考えると左内の登場はあと数回になるのか?さて佐内は、追っ手から逃れようと板塀に隠れるが、そのシーンの後、板戸を開けた勇が画面に映し出されたのにはびっくり。板⇒板と続くシーンで、まるで左内の隠れた板塀を、勇が開けるかのようだった。テレビドラマによく使う手法であるが、こういうおいしいシーンを見逃してはならないぞ!

C三谷氏の右に出るものはいない
勇がお茶を煎れようと戸棚を開けて探していたら、それを母・ふでに見つかってしまった。『何をしているんですか?』と怒られながらも勇はお茶を煎れようとするが、引き出しに手をやると『覗かない!』。急須を触ろうとすると、『触らない!』。ため息をつくと『ため息をつかない!』と一喝された。野際陽子さん演じる母のセリフがとても良いテンポで入って見事なやりとりだった。筆者は思わず笑ってしまったが、こういう細かいシーンを書かせると三谷氏の右に出るものはいない。

C歳三の苦しみ
歳三は路上で薬を売っていた。効き目を実演していたためにかなり売れたようだが、詐欺まがいの手法で売るなど、歳三自身も行き詰まりを感じていたようだ。一方の勇は龍馬に『自分の行く末を考えた事があるか?』と尋ねられるが、何も答えられない。自分の浅さを知ったのだろう。それを受けて、『俺と年が変わらないのに(彼らは)進むべき道を分かってる。日本の行く末を考えてる・・・』と歳三に訴えるが、『俺は薬売りになると・・・』相変わらず覚めていた。それでも虚勢を張って必死に生きている様子が伺えたが、早くから両親を亡くし、2度も奉公に出て失敗するなど、歳三の苦闘ぶりも見られた。もしかしたら”身分”に最も苦しんでいたのは歳三かもしれない。

D北の国から?
勇が龍馬、左内と話している所に、困った顔をした父・周助がやってきた。お客さんが来ているからと、その場を立ち去ったが、その後、怒鳴り声が・・・。勇の縁談話を勝手に進めたとして、夫婦喧嘩になったのだ。その後勇を交えて話をするが、納得出来ない母・ふではとうとう家を飛び出してしまった。困りながらも、これでいいのだという周助の表情が読み取れたが、田中邦衛さんの演技は、どうしても”北の国から”とだぶってしまう。それだけ存在感がある俳優だと感じたが、田中さんは味があってホントに素晴らしい。近藤周助がどんな人物だったのかは分からないが、田中さんが出るだけで、周助はあたたかくて不器用な人間だったと察しが付く。

Eハマり役かも?
藤原達也演じる沖田惣次郎が登場。ご存知!のちの沖田総司だが、三谷氏は沖田を明るい底抜けにキャラクターで描くようだ。今回も勇、龍馬、左内がいる中、何の気を使う事なく登場。それが若さなのだろうか?とにかく天真爛漫で、今までの暗く病弱なイメージからは完全に脱却している。憎めない沖田という表現がぴったりか?まだ子供っぽさを感じるが、当時17歳?というのを考えると年相応かもしれない。”天才剣士”としての名をほしいままにしている総司だが、写真が残されてないなど、謎の多い人物として知られている。気が短かったという話、子供好きだった、笑い上戸だったという話があるが、三谷氏が作る沖田像が楽しみだ。最後に・・・大河のキャスティングが発表された時、『なにーっ?沖田総司が藤原達也?おいおい!』と思った自分を恥じた。藤原くん、ごめんなさい。藤原くんの総司、凄く良いです。今後も期待しています。

F黒板五郎だ!
嫁問題で再び親子の対話。ここで田中節が大爆発!『もしかして好きな人がいるのか?』と言うセリフには、息子の純と会話する黒板五郎が垣間見られた。縁談先は身分の良い所で相手にも会ったと言って強く勧める五郎、いや、周助。自分も含めて近藤家は三代続いて多摩の百姓であり養子で、血のつながった子供の顔が見たいのが理由だが、嫁をもらうのはもう少し後にしたいと勇は父に申し出る。武芸の精進に・・・と訴えるが、そこでふでの荷物を運び出す業者が・・・。それを見て本当に出て行く気だと落胆する周助。そのひとつひとつに、やはり五郎を見た!でも、これでいい!

G歳三の生きる道が決まった!
詐欺まがいの商法で薬を売る歳三。歳三が道場破りをして相手にケガを負わせて、そこを薬売りの相棒が通りかかるという手だが、武士らしくない格好で立ち合うなどそのやり方がバレてしまう。『道場破りが薬を売っているんだ』の名言?理屈?を残すものの結局は袋叩きにあってしまう。悔しがる歳三に対して、殴られている間ずっと女の事を考えていた相棒は、悔しくない!俺の勝ちだ!俺達百姓があいつらと渡り合うのはこれしかないんだ!と言うが、実は筆者にはこの意味がよく分からなかった。百姓にはプライドがないと感じたのか?相棒の言う事に違う!と答える歳三。でも、歳三が自分の歩むべき道がここでハッキリと分かったのだけは事実だ。

H”身分”が人生を決めていた世の中
家出した母を迎えに行った勇は、母から恐るべき言葉を聞く。『あなたは多摩の百姓でしょ?侍を気取るのはやめて!武家の娘を嫁に?身の程を知りなさい!あなたは百姓の子!』。おいおい、養子だからといっても言い過ぎだろう?と思ったが、さらに『母上は私の事をお嫌いですか?』の問いに『言わずもがな!』とハッキリ答えるふで。キツいなぁ〜と見ていたが、元はと言えば、ふでも百姓の娘で、苦労して武士の嫁の座を手に入れたそうだ。だから、なんの苦労もせずに今の地位を築いたのを許せないと言う訳だ。その気持ちも分からない訳ではないが、勇の心にずっしりと心に響いたのは間違いない。現代は平等の世の中だが、日本の歴史には常に”身分”がつきまとっていた。身分が人の心まで変えてしまっていたのではないだろうか?それを考えると恐ろしい世の中である。しかし、その身分が今、なくなろうとしているのである・・・。

I〜より〜らしく・・・
歳三が傷ついた身体で試衛館にやってきた。やってくるなり、武士になりたい!試衛館に入門させてくれ!と頼む。いくら武士と言えども、出自は変えられないと分かった勇は、『俺は武士よりも武士らしくなってみせる!日本一武士の心を持った百姓になってみせる』と宣言する。身分の重さを改めて知った勇の名言だが、この言葉はまさにオンリーワンを意味しているのではないだろうか。ご存知!この言葉はのちの新選組にも通じる言葉だが、歳三の生きる道が決まったと同時に、これからの近藤の生きるテーマが決まった瞬間でもあった。以上の事から分かるように、第3回のテーマは”身分”だった。その想いが十分に感じ取れたのではないだろうか。それはそうと、『〜より〜らしく・・・』という言葉は流行語大賞にならないか?筆者は個人的にこれから仕事で使いそうである。

【来週の展望】
勇を慕って試衛館にたくさんの人が集まってくるらしい。山口(斎藤)一、山南敬介、そして芹沢鴨も登場するが、どんな出会いになるのか楽しみである。そして、妻となるつねも登場!時代も桜田門外の変によって大きく変化する。とにかく楽しみだ。それはそうと、武蔵の頃に比べて文字が多くなっている。更新も遅れがちになりますが、今後ともよろしくお願いします。間違いがあれば遠慮なくご指摘下さい。また、人の見方はそれぞれです。感想も掲示板の方にお待ちしています。

第2回「多摩の誇りとは」 (1月18日放送)

【物語】
安政4年(1857年)。勇(香取慎吾)は、みつ(沢口靖子)を伴って生れ故郷の多摩に剣術の出稽古に赴く。多摩は、かつての勇自身がそうであったように、熱心に剣術を習う農民が多い土地柄であった。在郷の支援者・佐藤彦五郎(小日向文世)の屋敷で、勇は親友の歳三(山本耕史)と再会するが歳三の様子がなぜか気にかかる。稽古を終えた勇は、彦五郎と小島鹿之助(小野武彦)の二人から、「横行する盗賊から滝本家の財産を守ってほしい」と頼まれ、快諾する。佐藤家に嫁いでいる歳三の姉・のぶ(浅田美代子)に声をかけられた勇は、「今は薬の行商を生業(なりわい)としているが本心では勇のように武士になりたがっている」と歳三の胸中を教えられる。結局、盗賊退治に歳三も加わることになり、勇、歳三、みつの三人が滝本家に出向く。滝本家は裕福な農家で、嫡男・捨助(中村獅童)は勇の幼なじみだった。捨助は、金で雇った助っ人の剣客・永倉新八(山口智充)を勇たちに紹介する。その夜、永倉の加勢もあり、勇たちは一味を退治する。その騒ぎの中、勇は原田左之助(山本太郎)という男と出会う。永倉、原田両名との出会いが後の自分と大きな関わりを持つことになろうとは、勇には知る由もなかった。盗賊退治で見事な働きを見せた勇だったが、歳三を助けるためとは言え、生れて初めて人を斬ってしまったことでひどく落ち込んでしまう。その話を聞いた歳三の兄・為次郎(栗塚旭)は、動乱の世が訪れる気配を告げ、「勇の剣が求められる時が必ずやって来る。勇と歳三の二人の力で時代と切り結べ」と言って励ます。  翌日、駐日総領事・ハリス(マーティ・キーナート)の一行を見物した後、勇は歳三に試衛館入門を勧める…。
【牛嶋のズバリ感想文】
まだ2週目だが、すがすがしさを感じるのはなぜだろう?きっと1回目の放送を見て、”これから期待出来る!”と思ったからに違いない。しかし、『武蔵-MUSASHI-』の1回目も同じ気分だったから驚きだ。筆者はなんと!『武蔵-MUSASHI-』の1回目の放送を”面白かった”と書いているのだ。でも、面白いと思いながら見ないと楽しめないし、1年という長きに渡って見るのだから、最初から粗探しするのもいけない事。そういう気持ちから書いた文章である。でも、それは2週目にして見事に散ってしまったのは寂しい限りである。宮本武蔵は永遠に忘れないが、『武蔵-MUSASHI-』は早く封印したい気持ちでいっぱいだ。でも、ここにきて黒澤プロがNHKを提訴するなど、大河が終わったのにネタ提供しているのは、ある意味凄い事だ。この分ではビデオ化が当分先になりそうだが、出しても売れるのか?という疑問もある。さて、そんな『武蔵-MUSASHI-』の二の舞は御免とばかりに、『新選組!』2週目の感想文いきましょう!

@”冒頭での解説”は嬉しい
長い大河の歴史の中で、冒頭に解説が入るのは決して珍しい事ではないが、『新選組!』でも、2週目から解説が始まった。今回は近藤勇の名前についてだったが、宮川勝五郎⇒島崎勝太⇒近藤勇と名前が変わったのを分かりやすく紹介していた。近藤勇が養子だったのを知らなかった人も多い事だろう。新選組の基礎の基礎を、視聴者と一緒に勉強していくようで、冒頭での解説は有効と言える。『葵〜徳川三代』では、中村梅雀演じる水戸光圀と、助さん&格さんの解説で楽しませてくれたが、『新選組!』でも、本編の内容とリンクしたテーマ設定を期待したい。

A時代の変化は人をも変える?
戦国時代を舞台とする時代劇だと、兄と弟、父と子の争いなどが描かれる事が多い。しかし、時代も変わればそういう事はないのか?『新選組!』では、ほのぼのとした兄弟愛が随所に描かれている。今回は、勇の兄&歳三の兄、姉が登場したが、そのやりとりは現代劇に近いものを感じさせた。思えば坂本龍馬もそうだった。姉の乙女に送った手紙が多く残され、その手紙が坂本龍馬の人物像を膨らませた。その辺りは”太平の世”徳川300年の歴史を感じさせる。この時代に生きていた訳ではないので分からないが、時代の変化は人までも変えてしまう・・・それを改めて感じた次第だ。

Bこの時ならでは
出稽古のために多摩に戻った勇。その際、兄から小遣いを貰っていたが、こういう細かいエピソードが描かれるのは面白い。養子に出たとはいえ、宮川家では勇の存在を誇りに思っていたと考えられる。そして、拳が入るほど口が大きかったという勇のエピソードも紹介されていたが、新選組の”しの字”もない時だからこそ描けたエピソードであろう。こういう細かいエピソードを『武蔵-MUSASHI-』ではもっと描いて欲しかった。今となっては遅いが・・・。

C三谷氏には頭が下がる?
若き日の土方歳三は奉公に出ている。その行き先が”上野の松坂屋”というのは面白い。松坂屋と言えば今や巨大な百貨店であるが、元は呉服屋。NHKなので名前は出せなかったのは残念だ。番頭に殴られて奉公先を抜け出したというエピソードがあるが、奉公先でずっと過ごしていたら”新選組の土方歳三”はなかったのである。それを考えると、人間の一生というのは分からないものだ。その後、多摩に戻って家伝薬の行商をするが、今回の話の中で打ち身や捻挫に効く”石田散薬”が登場していたのは素晴らしかった。ホント、細かい話を織り交ぜるのは嬉しい事。三谷氏の勉強には頭が下がる。でも史実によると、歳三は薬を売り歩きながら剣術修行に励んだらしいが、それは描かれるのかな?

Dハンドボール位の顔
ここでプライベートな話をひとつ。沖田総司の姉・みつを沢口靖子さんが演じているが、筆者は沢口さんに1度インタビューをさせてもらった事がある。岡山で舞台公演があって、その記者会見で来岡していたのだが、会見場に顔を出していた上司から、『今すぐ来い!強引に10分だけ時間をもらった』とホテルに呼ばれ、いきなりインタビューさせられたのだ。準備も何もしていない中、美しい沢口さんを前に硬直状態。何を聞こうかホントに迷ったが、最初の質問は『本当に沢口靖子さんですか?』だった。今となってはなつかしい思い出だが、インタビュー終了後に、『インタビュー、お上手ですね・・・』と、沢口さんに褒められたのは嬉しかった。これはちょっと自慢かも。でも、あんなに顔の小さな女性は見た事がなかった。大きさで言うとハンドボール位だった。これ、ホント!

E良い味出してるぞ!中村獅童
盗賊から滝本家の財産を守るべく、勇は、歳三、みつを伴って滝本家に出向くが、そこで滝本家の嫡男・捨助が登場!ご存知のように昨年の『武蔵-MUSASHI-』では、徳川秀忠を演じた獅童。将軍とはいえチョイ役に甘んじたが、今回はメチャクチャ軽い役で、そのギャップにびっくりしてしまった。でも、軽い役が見事にハマっていて、獅童の芸達者な面が見られた。今後、ずっと勇には関わっていくようなので、これからの獅童が楽しみだ。

F兄弟愛の訳
歳三の兄・土方為次郎が登場。20代前半の歳三の兄にしてはずいぶん年上のような気がしたが、歳三は5人兄弟の末っ子。長男の為次郎とは実に23の年の差があったので、そこは頷ける話だ。為次郎は、早くから盲目となったらしいが、歳三の父は歳三が生まれる前に他界。母も6歳の時に亡くしたという。そこに土方家の苦労の跡が見えるが、だからこその兄弟愛なのかもしれない。

G山口智充もいいね〜
捨助は、盗賊退治にあたって助っ人を雇っていた。その助っ人こそ、のちの新選組副長助勤・永倉新八であった。この出会いは全くの創作と思われるが、松方弘樹の物真似をしているDonDokoDonの山口の面影は全くなし。大河にお笑いタレントが出る事は決して珍しくはないが、山口を知らない人は誰も山口を漫才師とは思わないだろう。それだけ役者としての存在感があり、お笑い出身も立派な俳優になれるという事を改めて証明した気がする。永倉は『新撰組顛末記』で新選組を後世に伝えるが、その功績は大きい。それにしても『年は19になります・・・』というやりとりは面白かった。ドラマにおける年齢のギャップ、疑問を埋める良い手だと思った。さすが三谷氏!

I勇も活人剣?
滝本家を盗賊から守ろうとする勇だが、これまで人を斬った事がなく、今後も出来れば剣を使いたくない旨を伝えた。これこそ活人剣?と思ったが、その考えは宮本武蔵に通じる所がある。しかし、のちの新選組局長という事を考えると、活人剣では生きていけない訳で、今後、勇が剣に関してどう向き合っていくか楽しみだ。

J歳三があってこその勇
滝本家に盗賊がやってきた。捨助が銃の扱いに手間取っている中、盗賊に突っ込む勇だが、なんと!鉄砲で右腕を撃たれてしまった。こんな史実があったとは考えられないが、その後、土方の危機一髪に、止むに止まれぬ状態で盗賊を斬ってしまった。天下の近藤勇が”生まれて初めて人を斬った”瞬間であった。『侍にさえならなければ刀を持つ事もなく、人を斬る事はなかった』と落ち込む勇だが、それに対して歳三は、『(斬らなければ)俺は死んでいた。いいのか?俺は死んでも?俺が死んでも賊が生きていればお前は苦しまないのか?侍になれた男が侍になった事を後悔している。侍にならなかった俺がこんなに腹の立つ事はない』と訴えた。以上の事から、これは勇の成長ドラマであり、歳三があってこその近藤勇。友によって人は成長するのだという事を印象づけた。思えば昨年の『武蔵-MUSASHI-』も、”武蔵の成長ドラマ”という位置づけ(by NHK)だったが、その思惑は見事に失敗した。う〜ん、思い出すだけで腹が立つ!

K三谷氏の危険性
逃げた盗賊では?と疑いをかけられた男がいた。その男は、のんきに人の家の飯を食っていたが、のちの新選組隊士・原田左之助であった。そのユニークぶりに、おいおい、こんな出会いはないだろう?と疑問を持ったが、そこはもうしばらく様子を見る事にしよう。左之助は永倉新八に勝負を挑まれるが、口の周りに飯粒が付いていると勇に指摘される。『あっ、付いてるかぁ?』と左之助は聞き返すが、ここは”視聴者が笑うべきところ”だったのだろう。しかし、筆者は素直に笑えなかった。ある程度の笑いは必要であっても、ここでは必要ないと思ったからだ。三谷氏は笑いを随所に織り交ぜていくらしいが、無理に作ろうとすると墓穴を掘る可能性がある。これがのちの仲間同志だからいいものの、仮に池田屋事件で笑いを作れば視聴者は一気に覚める事だろう。これでは寸劇になってしまう。三谷氏は笑いのツボを心得ているだけに、もしかしたらこのツボが悪影響を及ぼす可能性があるのではないだろうか?笑いについては今後も指摘していく事にする。

L局長、副長の誕生までもう少し
ハリス一行を見た後、勇は歳三に試衛館に入門する事を勧めたが、『違う道を歩き出したんだ』と答える歳三。しかし、勇の『一緒にデカい事をやろうぜ!』という更なる言葉に、『考えておく』と返事した。試衛館に入門するのは来週の放送になるが、すんなり試衛館入門を受けなかったのは歳三の存在感を出すための演出か?その辺りの経緯が筆者には分からないので何とも言えないが・・・。新選組結成はまだ先の話だが、のちの局長、副長の誕生までは近いぞ!
【来週の展望】
決して好意的に見ているからではないが、2週目も楽しく見る事が出来た。早くも写真週刊誌に、『時代考証がメチャクチャ』と書かれ、新選組サイトの掲示板にも批判めいた書き込みが多いようだが、筆者としては、去年のような失望感がないので、その辺りは目をつぶっている状態である。確かにのちの新選組隊士との出会いも”ドラマドラマ”しているかもしれない。でもそこは、やはりドラマなんだから・・・と解釈している。次から次へと出会う様子は、まるで”真田十勇士”のようだが、そこは三谷氏の狙いなのだろう。さて来週は、勇に縁談の話があるようだ。勝手に決めた事に腹を立てて母が家を飛び出してしまうようだが、そこで”身分”が話題にのぼるらしい。身分のない時代に移行している時に、勇の周辺で起きた身分の話・・・。うまく時代にリンクしている話になりそうだ。とにかく来週も楽しみに見るつもり。

第1回「黒船が来た」 (1月11日放送)

【物語】
元治元年(1864年)4月29日、京都。近藤勇(香取慎吾)率いる新選組隊士たちが、浪士取締りの御用改めに出動する。現場の細事を取り仕切るのは、副長の土方歳三(山本耕史)。不逞浪士が謀議企てのため集結している料亭に、長州藩の桂小五郎(石黒賢)が現われたとの知らせを受け、新選組の隊士たちは料亭を急襲する。沖田総司(藤原竜也)、斎藤一(オダギリ ジョー)らの剣技が光り、新選組による浪士捕縛劇は大成果を挙げる。しかし、肝心の桂は乱闘のさ中、現場から忽(こつ)然と姿を消し、隊士らを悔しがらせる。ことの顛末を定宿・寺田屋で耳にした坂本龍馬(江口洋介)は、近藤勇と初めて出会った10年前を思い起こしていた…。嘉永7年(1854年)。日本の開国を求めて来航したペリー提督率いるアメリカ艦隊、いわゆる“黒船”が世情を賑わせていた頃。時に近藤勇、21歳。多摩の農民の子であった勇は、市ヶ谷・試衛館道場の三代目当主・近藤周助(田中邦衛)の養子となっており、天然理心流の師範として門弟の剣術指南に明け暮れる毎日を送っていた。ある日、勇は幼ななじみの歳三と二人で立ち寄ったそば屋で、嫌味な剣客の桂小五郎と出くわす。ささいな事が原因で勇と桂は揉めるが、その際に坂本龍馬と知り合う。気さくな龍馬の誘いで、黒船を見に行くことになった勇と歳三は、松代藩軍議役・佐久間象山(石坂浩二)の従者に扮して浦賀へ向かう。黒船を目の当たりにした二人は、アメリカ人が大切にしているという星条旗を奪おうと試みるが船に近づくことすら出来ず、自分たちがいかに小さな存在なのかを思い知らされる…。
【牛嶋のズバリ感想文】
いよいよ2004年のNHK大河ドラマがスタートした。昨年の『武蔵-MUSASHI-』から受けた失望感の裏返しで、おそらくかなりの時代劇ファンが期待している事だろう。事実、筆者もその1人で、ここはNHKに”血反吐を吐く逆襲劇”を見せて欲しいものだ。今回期待出来る大きな要因は、物語が三谷幸喜オリジナルストーリーである事。ご存知のように、三谷氏脚本のテレビドラマ、映画、舞台はどれも傑作ばかり。筆者も数作触れているが、舞台は腹をかかえるくらい笑って見たものだ。三谷氏の素晴らしい所は、見る側の事をちゃんと考えてモノ作りをしている事。現に同じ番組制作者として見習うべき点が多い。だからこそ、視聴者を裏切る事はないと思っている。それに幕末は数多くの資料が残されているので、『武蔵』のように史実を覆す事はないだろう・・・という点も挙げておこう。去年はホントに、『おいおい・・・』というシーンが多すぎた。もうそれは絶対ないと信じているが、去年のダメージがあまりにも大きすぎてトラウマになっているのかもしれない。とにかく三谷氏の腕の見せ所である。聞く所によると、三谷氏は大の新選組好きらしい。それに、”今、最も新選組を知る男”と自負していたが、その言葉を鎌田敏夫氏からも聞きたかったっ!ううう・・・まぁ、それはいいとして・・・。それと、毎回終わるごとに、次回への期待感を持たせたい!とも語っていたが、これぞ番組の基本!。しかしながら、これが出来ない人が多いのである。さて、去年に続き大河の感想文を書かせて頂くが、このページはあくまでも筆者の独断で書くものである。時には怒り、ちゃんと描け!などと厳しいコメントを発する事もあるだろうが、了承した上でご覧頂きたい。

@見事な冒頭
新しいドラマの初回は、どんな風に始まるか非常に興味があるものだ。まさか、いきなりテーマ曲から始まる事はないと思ったが、時報と同時に目に飛び込んできたのは新選組の旗だった。”誠”という字が描かれた旗は本当にインパクトがあるし、これ以上カッコ良い御旗はないのではないだろうか?続いては大荒れの波の映像が飛び込んできた。同時に江戸時代の状況説明と字幕スーパー。NHKのアナウンサーのナレーション。とてもノーマルで丁寧な作りは、スタートにふさわしいと思った。”大きなうねりの中に 自ら身を投じていった 若者たちの物語である”というナレーションだって、大袈裟ではなく、ごく自然だった。さぁ、2004年の大河がついにスタートした!

A気楽な作りが良かった
次に、タイトルバックと音楽だが、これもとても良かったと思う。『武蔵』の時は、”ほ〜た〜るの〜ひ〜か〜り”と歌いたくなるぐらい”蛍の光”に似たメロディーだったが、『新選組!』は、ノーマルな音楽でありながら躍動感が漲っていた。それは新選組の走っている映像が多かったからだろう。また、映像のみならず、京都の町並みを版画で表現したのも良いアイデアだった。出演者等を表記するフォントも明朝体でなかった。全体的に力を入れすぎた作りでなかったのが良かったのではないだろうか。

B丁寧な作りだ
意外や意外!今年の大河は新選組の御用改めから始まった。インパクトを残す意味では良いアイデアだと思う。討ち入り準備の動きに合わせて、名前と役職などを入れて隊士を1人1人紹介していた。『武蔵』の無責任的な演出との違いに、とても好感を持ったのは言うまでもない。

Cストイックであって欲しかった
討ち入りと言っても、有名な池田屋事件ではなく、”料亭やなぎ”なる所へ討ち入るものだった。これはなぜか?なぜ池田屋を描かなかったのか?一瞬、『武蔵』の時の、”原作無視”という嫌な思い出が頭をよぎったが、きっと池田屋はのちほどしっかり描く事だろう。ここはあくまでも”1回目のご挨拶!”で、だからこそ、池田屋ではないシーンを作ったのでは?と思われる。でも、新選組の強さ、剣術家集団というインパクトは残せなかったように思う。池田屋じゃないんだからこれでいいのかもしれないが、沖田総司の茶目っ気な部分もいらなかったと思う。人を斬りに行くというのに緊張感がなさすぎたし、せっかく冒頭で討ち入りを持ってきたのだから、ストイックなシーンだけに徹しても良かったのではないかと思う。三谷氏は笑いを時に入れながら・・・とは語っていたが、筆者はもっとエグい部分を見せても良かったのでは?と思った。NHK的に難しいのか?でもそれが、10年前の若き近藤勇のシーンに転換した時、ギャップが生まれて良い思うのだが・・・。

D意味不明なキャラがいなくて良かった
初回から坂本龍馬、桂小五郎、そして、京都守護職・松平保容までが登場した。桂と近藤が若い頃に遭遇していた事実は把握してないが、のちに全く違う立場になるとは、この時は想像もしていなかっただろう。坂本龍馬は江口洋介さん。『春日局』で徳川家光を演じた若き日の江口さんが懐かしいが、今後どんな龍馬を演じてくれるのか期待したい。筆者としては、つい先日市川染五郎さんの竜馬(竜馬がゆく)を見ただけに、染五郎さんに軍配を上げたいが・・・(失礼!)。桂小五郎は石黒賢さん。堂々たる桂!という感じで、近藤よりも1つ年上とは思えなかったが、初回からふてぶてしさが感じられて良かったと思う。新選組ファンにとっては”憎たらしい桂”を演じてくれる事と思われる。そして、京都守護職・松平容保(会津藩)は筒井道隆さん。筆者の大好きな俳優だが、淡々と演じるその姿に容保らしさを感じた。いずれにしても『武蔵』に登場した、あかね屋絃三、亜矢といった意味不明なキャラが登場しなくてホッとした次第だ。

E本格的な時代劇はもう無理なのか?
第1回は新選組局長としての近藤から始まり、その後、10年前の近藤にタイムスリップするという展開だった。坂本龍馬と出会い、近藤家に養子に入った所をしっかり描いているのには好感が持てた。その他、野際陽子さん演じる義母に冷たくされている様子、幼少の頃の沖田総司、沖田の姉みつも登場して、近藤家の周辺もちゃんと描いていた。大河ドラマがホームドラマ化してだいぶ経つが、主人公の背景を描くが故の事だろう。個人的には遊びのない”本格的な時代劇”を描いて欲しいと思うが・・・これも無理な話なのだろう。

F現代へのメッセージだ!
坂本龍馬の誘いによって黒船を見る機会に恵まれた近藤と土方だが、そこで幕末を代表する開国派の軍学者である佐久間象山と出会った。今後の近藤や龍馬たちに大きな影響を与える人物だが、”生まれてから最初の10年は、己の事だけを考えよ。そして次の10年は家族の事を考えよ。20歳になってからの10年は、生まれた国の事を考えよ。そして30になったら日本の事を考えよ。40になったら世界の事を考えよ!ただし10年後に日本の事を考えなければならなくなった時に正しい判断が出来るように、今から勉強せよ”この言葉には感銘を受けた。こんな事を考える人は現代にいるだろうか?現代の若者へのメッセージと受け取れた。これが大河に必要なモノなのである。

Gなるほど!
黒船を見た近藤は、象山に尋ねた、『あいつらにとって一番大事なモノはなんですか?』。すると迷わず象山はこう答えた『旗だ!』。いやぁ〜、このやりとりは、もう最高の一言!これがのちの”誠”の御旗に通じているかと思うと涙モノだ。新選組があれだけ旗を大事にしたのも納得する。思えば去年の『武蔵』は、”点”があまりに多く、それが全く線で結ばれてなかった。しかし、今年の大河は違う!”点”と”点”がしっかり”線”で結ばれる事だろう。細かい部分だが、三谷氏の書くセリフは一言一言注目したいと思った。

【来週の展望】
初回の『新選組!』が終わったが、早くも来週の放送が楽しみである。その辺りは三谷氏の狙い通りで、さすがにしっかりツボを押さえていると思う。来週からは、のちの新選組隊士となる様々な人物との出会いがあるが、どんな出会いがあって、どんな風に勇に惹かれていくのかに注目したい。そして何より近藤勇自身の成長も楽しみだ。某新選組のサイトの掲示板に、『ガッカリした・・・』というコメントがあったが、まだ1回目で判断するのは間違いだと思う。現に震えるようなセリフやドラマに必要な”キモ”という部分があったではないか?確かに筆者だって『ん?』と、首をかしげる点が全くなかった訳ではない。でも、もう少し見た上でないと判断は出来ないという事を訴えておきたい。しかしながら、あえて問題点を挙げるとすると、やはり出演者全体に幼さが感じられる事だろう。今まで近藤や土方を演じた俳優の年齢が高すぎるだけで、今年の大河は年相応・・・とは言うが、”芸能人”という何年経っても若い感覚を持っている人が演じるだけに、年相応では”重厚さ”が感じられない気がする。でも、その辺りは筆者の新選組に対するイメージが深すぎるからだろう。見る側にも努力が必要だと思った。とにかく香取慎吾さん、山本耕史さんらに期待したい。少なくても、去年の『武蔵』のようになる事だけはないだろう。それは確信した。

新選組TOP  / 時代劇TOP / DJ USHIJIMA'S PAGE